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2012/1/4

総合 - ドイツ経済ニュース

日中企業の独企業買収が活発化

この記事の要約

日本と中国の企業がドイツ企業の買収を活発に展開している。日本企業では歴史的な円高が追い風となっているのに対し、中国企業は豊富な外貨準備高を武器に積極的な買収攻勢に乗り出している。中国勢は、以前は倒産した企業の買収で欧州進 […]

日本と中国の企業がドイツ企業の買収を活発に展開している。日本企業では歴史的な円高が追い風となっているのに対し、中国企業は豊富な外貨準備高を武器に積極的な買収攻勢に乗り出している。中国勢は、以前は倒産した企業の買収で欧州進出の足がかりを得ていたが、最近は財務の健全な企業にもターゲットを広げているという。『ハンデルスブラット』紙などが報じた。

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外国為替市場では円高が進んでおり、先月30日にはユーロ導入(2001年)以降の最高値(1ユーロ=100.20円)を更新。2日には一時、99円を割り込んだ。

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円高は日本の輸出産業に大きな打撃を与えるものの、国外企業の買収ではまたとない好機をもたらしている。低金利で資金を調達しやすいことも買収の流れを後押しする。ドイツ銀行のM&A担当者は、日本企業は福島原発事故や低迷する国内経済、少子高齢化による人口減少などを背景に、確実な成長が見込める国外市場への進出を強めていると指摘する。

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中国企業は急成長で得た豊富な外貨を武器に、高い技術を持つ独企業に触手を伸ばす。ドイツ銀の担当者によると、日本・中国企業による2011年の独企業買収総額はいずれも10億米ドルで、前年比でそれぞれ6倍、8倍に急増した。

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2010~11年の日本企業による独企業買収の最大案件は日清紡によるTMDフリクション買収(7億4,700万ドル)、中国企業ではパソコン大手Lenovoグループ(聯想集団)によるMedion買収(株式79.6%取得、7億2,100万ドル)だった。

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中国企業による買収の動きはこの年末年始にもあり、太陽電池の独Sunwaysは中国同業のLDK Solarに身売りすることを決めた。同業の独Conergyは中国同業のトリナ・ソーラーやYingli Green Energyから出資を仰ぐ方向で交渉を進めているもようだ。SunwaysとConergyはともに経営が苦しい。ドイツの太陽電池メーカーは厳しい価格競争を背景に総じて経営が悪化しており、今後はこれら企業の技術力やブランド価値を目当てに中国企業が買収攻勢を強める可能性がある。

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中国企業にとっては、自国政府の成長・経営戦略に合致した買収であれば億ドル単位の出費も苦にならないようだ。独経済誌『マネジャー・マガジン』によると、中国系政府ファンドは独自動車大手ダイムラーへの出資に向けて交渉を進めている。5~10%の出資を目指しているとされており、実現すると30億ユーロの巨額投資となる。

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ドイツ以外の欧州諸国でも中国企業の動きは活発で、三峡ダムを運営する三峡集団は12月下旬、ポルトガル電力公社(EDP)の資本21%をめぐる政府の入札で落札に成功した。入札提示額が時価を53%上回る約27億ユーロと群を抜いて高かったほか、ポルトガルに総額80億ユーロの投資を行うとしたことが高く評価されたもようだ。ドイツのエネルギー大手エーオンやブラジルのエレトロブラスも入札したが太刀打ちできなかった。

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三峡集団はEDPへの資本参加を通して風力発電分野のノウハウを吸収するほか、スペイン、ブラジルの電力市場への参入を図る。財政悪化に直面する欧州諸国は国営企業の放出を義務づけられており、中国企業は民営化入札で今後も存在感を示しそうだ。

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