ドイツの経済界が景気の先行きに楽観的だ。今年は国内総生産(GDP)の伸び率が過去2年間に比べ大幅に鈍化するのが確実となっているものの、企業景況感は高水準が続いている。GDPの3分の2を占める個人消費も依然として安定しており、Ifo経済研究所のハンスヴェルナー・ジン所長は「ドイツ経済は西欧の景気冷え込みの影響を免れているようだ」と発言した。2012年にドイツがマイナス成長に落ち込むと予想するエコノミストは少ない。ただ、研究機関などが発表する経済予測は欧州連合(EU)のユーロ危機対策が効果を上げることを前提としており、ギリシャなどの財政危機が深刻な信用不安に発展した場合はドイツ経済も下振れが避けられないとみられる。
\ドイツの実質GDP成長率は2010年に3.7%に達し、09年のマイナス5.1%から大きく回復。連邦統計局の11日付速報によると、2011年も3%の高成長を維持した。
\一方、2012年は成長率が大幅に鈍る見通しで、主要経済研究所は0.3~0.6%を予想している。マクロ経済学上の景気後退(2四半期以上続くマイナス成長)に陥るとの見方も強く、日刊紙『ヴェルト』が14金融機関のエコノミストを対象に実施したアンケート調査では、「11年第4四半期と12年第1四半期がともにマイナス成長となる」との回答が7人に上った。「12年第1四半期と第2四半期がマイナス成長となる」も1人おり、合計すると過半数の8人が短期の景気後退を見込んでいる。
\だが、そうした予想とは裏腹に経済界ではやや楽観的な見方が強い。Ifoの独企業景況感指数は12月に107.2となり前月から0.6ポイント上昇。2カ月連続で改善した。現状判断を示す指数は3カ月連続で横ばいとなったものの、今後6カ月の見通しを示す期待指数は2カ月連続で上昇した。
\財界系シンクタンクのIWドイツ経済研究所が国内46の業界団体を対象に実施した景気アンケート調査でも「業界売上ないし生産高が今年増加する」との回答が過半数の26団体に達した。「投資と雇用規模を昨年並みかそれ以上にする」との回答もそれぞれ29団体、31団体と多い。
\主要業界団体に目を移すと、独電気電子工業会(ZVEI)は独業界の2012年生産成長率を5%と予想。ドイツ機械工業連盟(VDMA)も同4%を見込む。独化学工業会(VCI)は生産成長率で1%、売上成長率で2%を提示する。
\自動車業界も先行きを悲観していない。部品大手ボッシュのフランツ・フェーレンバッハ社長は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に対し、「グローバルレベルの景気後退は予想していない」と明言。世界の自動車生産が3~5%増加するとの見方を示した。業界の景気をけん引するのはアジアで、日本市場についても今年は震災の痛手から大きく立ち直るとみている。
\企業の業績拡大を背景に雇用の回復は今年も続きそうだ。このため個人消費は昨年に引き続き景気のけん引車となる見通しで、独小売業中央連盟(HDE)は業界売上が2%増加すると予想している。
\欧州中央銀行(ECB)が歴史的な低金利政策をとっていることも内需のプラス材料となる。消費者がローンを組みやすく住宅や耐久消費財の需要が伸びるためで、Ifoのジン所長は「建設(需要)はドイツのリセッション入りを防ぐ」と明言する。
\ \金融危機が再来すると打開困難
\ \だが、南欧諸国などの財政危機が銀行間取引市場の機能不全につながると、深刻な金融危機が再来し、実体経済への影響が避けられなくなる。これはエコノミストが最も恐れているシナリオだ。リーマンショックの時と異なり、大規模な財政政策を通して危機を速やかに打開することが難しいためで、欧州発の世界不況に発展することも起こり得る。
\この場合、受注残が比較的多いドイツ企業でもキャンセルが増えて企業景況感は急速に冷却。景気見通しの悪化から個人消費にもしわ寄せが及ぶと予想される。
\