解雇を通告した被用者がその取り消しを求める訴訟を起こしても、雇用主が係争中に給与を支給することはまずない。解雇が正当と思っているのだから当然である。支払うのは、解雇の無効が裁判で確定したあとになる。この場合、未払いとなっていた給与を一度に支給すると、被用者は所得が急増するため、多額の所得税を納入しなければならなくなる。被用者からすれば納税額の増加分を雇用主に請求したいところであろう。では実際のところ被用者にはそうした権利があるのだろうか。この問題に関する係争でラインラント・ファルツ州労働裁判所が昨年8月に判決(訴訟番号: 9 Sa 155/11)を下したので、ここで取り上げてみる。
\裁判を起こしたのは長期の病欠を理由に2007年9月末日付で解雇通告された自治体労働者。解雇訴訟では09年2月の判決で解雇無効が確定した。これを受けて被告の自治体は未払いとなっていた19カ月分の給与を一度に支給。この結果、原告は09年の所得税額が賃金の支給を月々受ける場合に比べ4,723.77ユーロ多くなったため、雇用主に対しその分の支払いを求める訴訟を新たに起こした。
\原告はこの訴訟では第1審、第2審とも敗訴した。第2審のラインラント・ファルツ州労裁は判決理由で、現行法にはこうしたケースで損害賠償の支払いを雇用主に義務づける条項がないとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。
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