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2012/1/18

総合 - ドイツ経済ニュース

「金融取引税導入なら大打撃」、フランクフルトの空洞化を業界が懸念

この記事の要約

メルケル首相が9日の独仏首脳会談で、サルコジ大統領が実現に意欲を示す金融取引税を支持したことが、ドイツの金融業界で波紋を呼んでいる。金融機関が業務の国外移管を余儀なくされドイツの金融立地競争力が大幅に落ちかねないためで、 […]

メルケル首相が9日の独仏首脳会談で、サルコジ大統領が実現に意欲を示す金融取引税を支持したことが、ドイツの金融業界で波紋を呼んでいる。金融機関が業務の国外移管を余儀なくされドイツの金融立地競争力が大幅に落ちかねないためで、特に国際金融都市フランクフルトは危機感を強めている。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が12日付の地方版で報じた。

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欧州連合(EU)の欧州委員会は昨年9月、EUの独自財源強化に向けた金融取引税導入を正式提案した。2014年1月から株式・債券取引に0.1%、デリバティブ(金融派生商品)取引に0.01%の率で課税する方向だ。

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英国はEU単独での導入に強く反発し拒否の立場を明確に打ち出している。一方、サルコジ大統領は導入に意欲的で、メルケル首相も「個人的な立場」としながらも、ユーロ圏全域での導入に支持を表明した。

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これに対し、フランクフルト・マイン金融協会のルッツ・レッティヒ理事長(モルガン・スタンレー独法人監査役会長)は「フランクフルトは世界で最も重要な市場の1つだ。特にデリバティブと証券の分野では」と指摘。金融取引税が導入されれば、長い時間をかけて築き上げてきた競争力が危険にさらされると懸念を表明した。

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外国銀行協会のシュテファン・ヴィンター会長(UBS独法人取締役)は、金融機関は年に何度もポートフォリオを入れ替えると指摘。金融取引税が導入されれば利益を稼げなくなり、ロンドンやスイスに事業を移管せざるを得なくなるとの立場を示した。

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投資・資産管理全国連盟のトーマス・リヒター会長は、金融取引税が導入されると、ファンド型のリースター年金(公的助成付き個人年金)の利用者も大きな損失を被ると警鐘を鳴らす。

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地元ヘッセン州のフォルカー・ブフィエ首相は10日、金融センターのロンドンを抱える英国抜きの金融取引税導入はフランクフルトに一方的に不利益をもたらすと批判した。大規模な雇用喪失にもつながるとして、メルケル首相に反対の意向を表明している。

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