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2012/1/25

総合 - ドイツ経済ニュース

コメルツ銀が公的支援なしで資本増強へ

この記事の要約

独金融大手コメルツ銀行のブレシング頭取は19日、欧州連合(EU)の欧州銀行監督機構(EBA)から義務づけられた自己資本の増強を実現できるとの見通しを明らかにした。公的支援を新たに受けることも増資も不要としている。市場では […]

独金融大手コメルツ銀行のブレシング頭取は19日、欧州連合(EU)の欧州銀行監督機構(EBA)から義務づけられた自己資本の増強を実現できるとの見通しを明らかにした。公的支援を新たに受けることも増資も不要としている。市場ではこれまで、公的支援や増資が避けられないとみられてきた経緯があり、同行の株価はこの日、約15%急騰。翌20日も5%上昇した。

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EBAが昨年実施したストレステスト(健全性審査)でコメルツ銀行の狭義の中核自己資本比率は9月末日時点で6.93%にとどまり、合格基準の9%を大きく下回った。自己資本の不足額は53億ユーロで、6月末までに不足を解消することを義務づけられている。

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ブレシング頭取によると、同行は6月末までに自己資本を63億ユーロ増強し、狭義の自己資本比率を11%へと引き上げるメドがたった。63億ユーロのうち30億ユーロ強はリスク資産(RWA)の圧縮、24億ユーロは利益の内部保留を通して実現。ボーナスを自社株で支給する措置を通しても最大2億5,000万ユーロを確保するという。

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コメルツ銀行は9月末時点の資本不足額53億ユーロを12月末までに30億ユーロ減の23億ユーロへと圧縮した。内訳はリスク資産の圧縮が12億ユーロ、利益の内部保留が12億ユーロ、資本管理が2億ユーロとなっている。今年は上半期中にさらに33億ユーロ改善する計画だ。(下のグラフを参照)

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リスク資産を圧縮すると、銀行の融資能力が低下し、貸し渋りが発生しやすい。このためEBAは資本不足解消を義務づけられた銀行が資産圧縮に伴い融資抑制に傾くことを警戒している。

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コメルツ銀はこれを踏まえ、リスク資産圧縮を中核市場のドイツとポーランドの顧客にしわ寄せが出ない形で実施。リスク資産圧縮額の半分は担保評価の精度の引き上げなどリスク管理能力の改善を通して実現する。ブレシング頭取は中小企業向け融資を中核事業に据えていることを特に踏まえて「ドイツの経済界に融資資金を供給するというわが行の責任を理解している」と明言した。米国など欧州域外の顧客企業は資産圧縮の影響を受ける。

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同行の足かせとなっているのは不動産金融子会社のユーロヒポだ。南欧諸国の国債を大量に保有していることが響いている。コメルツ銀は先の金融危機で国の支援を受けた際、2014年末までにユーロヒポを売却することを欧州委員会に義務づけられたが、実現のメドは立っていない。

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EBAのストレステストではコメルツ銀を含めてドイツの6銀行が資本金不足の判定を受けた。これらの銀行は資本不足解消計画を20日、独連邦金融監督庁(BaFin)に提出した。これらの計画はEBAにも送られ、審査に付される。

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コメルツ銀に次いで資本不足額が多かったのは独最大手銀行のドイツ銀行で、32億ユーロに上った。同行は利益の内部保留などを通して2011年末にも不足を解消できるとの見通しを12月初旬の時点を示している。

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