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2012/2/8

総合 - ドイツ経済ニュース

経済や市民生活に寒波の影響

この記事の要約

欧州を広く覆う強力な寒気がドイツの市民生活や経済活動に影響をもたらしている。列車の運休やフライトの遅れは増加。河川や海路の凍結を受けて物流にも支障が出てきた。昨年打ち出したエネルギー転換政策を受けて国内の発電能力が減少し […]

欧州を広く覆う強力な寒気がドイツの市民生活や経済活動に影響をもたらしている。列車の運休やフライトの遅れは増加。河川や海路の凍結を受けて物流にも支障が出てきた。昨年打ち出したエネルギー転換政策を受けて国内の発電能力が減少しているため、当局や送電網運営事業者は暖房需要の拡大に神経をとがらせている。

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ドイツは昨冬、一昨冬と大雪を伴う寒波に見舞われた。今冬は1月まで暖かい日が続いたため、このまま春に突入するかにみえたが、2月に入り状況は一転。このところ各地の最低気温はマイナス10~20度台まで下がり、最高気温も零度に届くことはない。6日にはバルト海のウーゼドーム島で同地の観測史上最低となるマイナス29.1度を記録。首都ベルリンもマイナス24度を観測した。

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ウクライナやポーランドに比べると数は少ないものの、すでに凍死者が数人出ており、ドレスデンでは69歳の年金生活者がバルコニーで死亡した。東部の小都市ツォッセンでは暖房を使わずにいた70歳の男性が自宅で凍え死んだ。

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寒気は降雪をほとんど伴わないため、電車が立ち往生する事故や凍結による交通事故は少ない。そうしたなかで目立つのはディーゼル車の故障だ。全ドイツ自動車クラブ(ADAC)には寒さが特に厳しい独東部と南部を中心にディーゼルエンジンが動かなくなった会員からロードサービスの依頼が数多く入る。

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原因は燃料である軽油が寒さで使いものにならなくなること。軽油は気温が低いと軽油成分のパラフィンが結晶化してシャーベット状になり、燃料フィルターの目詰まりを引き起こす。

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石油会社はマイナス22度までは問題ないとしているが、実際にはそれより高い温度でも不具合が起きる製品もある。 マイナス40度でも利用できる極地用製品は一般に流通しておらず、ガソリンスタンドで給油できるのはマイナス24度対応の製品が限界という。

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河川の凍結も進んでおり、7日夕にはエルベ川のチェコ国境~ザーレ川合流地点の区間が航行禁止となった。ハンブルク~マグデブルグ間とチェコ国内は6日の時点で航行できなくなっており、エルベ川は全面的に閉鎖されている。

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バルト海でも海面の凍結が進んでおり、フォーポマーン地方の沿岸地帯では砕氷能力30センチ以下の船舶は6日から寄港が禁止されている。

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電力スポット価格が高騰

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寒波はエネルギー市場にも影響をもたらしている。ロシアからの天然ガス輸送は減少し、電力のスポット価格は上昇。ライプチヒの欧州エネルギー取引所(EEX)では6日の平均取引価格が1メガワット(MW)当たり78.12ユーロとなり、1週間前(同34ユーロ)の2倍以上に跳ね上がった。電力需要のピーク時の価格は95.52ユーロで、過去3年間の最高を記録している。

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スポット価格高騰の背景には原発8基の運転を昨年3月に停止したことがある。これによりドイツの発電能力は約9,000MW減少。寒波で電力需要が急増すると、供給が追い付かなくなる恐れがある。

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独コンサルティング会社Energy Brainpoolのトビアス・フェデリコ社長が経済紙『ハンデルスブラット』に語ったところによると、今の季節にドイツが必要とする発電能力は平均8万3,000MW。現在のように平年の気温を10度下回ると、さらに3,500MWが必要になるという。電力需給は極めて緊迫しているというのが当局や送電会社の見方だ。

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欧州全体が寒波に襲われているため、周辺諸国からの輸入で不足をまかなうことはできない。連邦ネットワーク庁は寒波が厳しさを増し電力需要が一段と拡大した場合は、発電効率が悪くコールドリザーブ状態にある古い石炭発電所などを再稼働させて切り抜けるとの危機シナリオを準備している。

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