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2012/2/29

総合 - ドイツ経済ニュース

ギリシャへの第2次支援策を独下院が承認

この記事の要約

ドイツ連邦議会(下院)は27日、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)によるギリシャへの第2次支援策を承認した。ユーロ圏17カ国の財務相会合決定を受けたもので、左翼党を除く与野党の圧倒的多数が賛成票を投じた。だが、一枚 […]

ドイツ連邦議会(下院)は27日、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)によるギリシャへの第2次支援策を承認した。ユーロ圏17カ国の財務相会合決定を受けたもので、左翼党を除く与野党の圧倒的多数が賛成票を投じた。だが、一枚皮をむくと、同支援はギリシャ問題解決の決め手にならないと大半の議員がみているというのが現実だ。閣僚のなかからはギリシャのユーロ離脱を求める声が出ており、メルケル政権の足並みは乱れている。

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ユーロ圏17カ国の財務相は20日の会合で、総額1,300億ユーロの第2次ギリシャ支援実施で合意した。ギリシャは3月20日に145億ユーロの国債償還を控えており、それまでに第2次支援が実行されないと無秩序なデフォルトに陥るという事情が合意の背景にある。

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合意はEUが求める歳出の追加削減策と民間債権者を対象とする債務削減の実施をギリシャ政府が19日の閣議で決定したことを受けて成立した。ギリシャ国債の保有者は債権の53.5%を放棄したうえで、残る46.5%についても長期のギリシャ新国債およびEFSF債と交換することを求められる。これらの措置により、国内総生産(GDP)に対する公的債務の比率を2020年までに2011年の161%から120.5%へと引き下げるというのがEUが描くシナリオだ。

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だが、景気後退が続くギリシャが財政赤字を圧縮できるかについては疑問が残る。すでに5年連続でマイナス成長が続いており、追加緊縮策が実施されれば、税収のさらなる減少が避けられないためだ。経済と税収がともに縮小する負のスパイラルは一段と加速する。

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「第3次支援は時間の問題」

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債務を圧縮していくには経済成長が欠かせないにもかかわらず、ギリシャ経済をどう再建するかについては外交レベルの議論がほとんど起きていないのが現状だ。独連邦議会の審議で野党・左翼党のグレゴール・ギジ院内総務が「ギリシャに必要なのはマーシャルプランであり、ベルサイユ条約ではない」と述べ、成長戦略を描かずに歳出削減を求めるにとどまるEUやメルケル首相の姿勢を批判したのはこの意味で的を射ている。マーシャルプランは第2次世界大戦で疲弊した欧州経済の復興に大きく寄与した米国の支援策。ベルサイユ条約は第1次世界大戦で敗北したドイツに対し巨額の賠償金支払いを課した講和条約で、後のナチス台頭の大きな原因となった。

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現状ではギリシャ財政を再建できないという認識は独与野党の多くの議員が共有しており、野党・社会民主党(SPD)のペーア・シュタインブリュック議員(前財務相)は第3次ギリシャ支援が間もなく政治日程に上ってくるとの見方を示した。ヴォルフガング・ショイブレ財務相自身もそうした可能性をすでに公言している。第2次支援は2015年で終了するため、第3次支援に向けた議論は2014年にも始まる可能性がある。

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ドイツ国民の間には歯止めなきギリシャ支援拡大への懸念が広がっており、『ビルト・アム・ゾンターク』紙の依頼で世論調査機関Emnidが実施したアンケート調査では第2次支援策に反対する市民が62%に達し、賛成の33%を大幅に上回った。

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ドイツのハンスペーター・フリードリヒ内相はこうした現状を踏まえ、ギリシャにユーロ離脱を促す意向を表明した。国内世論の支持を得られるほか、ギリシャにとっても経済競争力向上につながるとみているためだ。

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これは有名なエコノミストであるIfo経済研究所のハンスヴェルナー・ジン所長の提言でもある。それによると、ギリシャがユーロから離脱して旧通貨のドラクマを復活させれば、物価が急落して経済競争力が向上。国際収支が改善し、財政赤字の削減が可能になるという。

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一方メルケル首相は、ギリシャのユーロ離脱には計算できないリスクが伴うと指摘。こうした主張は無責任だとして明確に退けている。同じ理由から無秩序なデフォルトについても回避しなければならないとの立場だ。

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