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2012/3/7

総合 - ドイツ経済ニュース

CeBit開幕、今年はクラウドのセキュリティがテーマに

この記事の要約

世界最大の情報通信技術見本市CeBitが5日夜、ハノーバーで開幕した。メインテーマには昨年に引き続きクラウド関係が選ばれた。だだ、今回はクラウドの普及に欠かせないセキュリティの問題が前面に押し出されており、クラウドとは何 […]

世界最大の情報通信技術見本市CeBitが5日夜、ハノーバーで開幕した。メインテーマには昨年に引き続きクラウド関係が選ばれた。だだ、今回はクラウドの普及に欠かせないセキュリティの問題が前面に押し出されており、クラウドとは何かを消費者や企業に広く知らしめることに重点が置かれた昨年とはややポイントが異なっている。IT大手各社は顧客獲得に向けて、そうした事情を踏まえたコンセプトや商品を発表した。

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クラウドはデータ保存やソフトウエアをインターネットを通して提供するサービスで、企業やネットユーザーは必要に応じてそのつどダウンロードして利用する。データやソフトを手元のハードディスクなどに保存する必要がなくなるため、特に企業はハードウエアやシステム管理への投資コストを圧縮できる。

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世界市場規模は2010年の683億ドルから昨年は813億ドルに拡大。今年は1,000億ドルを突破すると予想されている。

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独情報通信業界連盟(Bitkom)によると、ドイツでもIT市場全体が緩やかな成長にとどまるなかで、クラウドは年率37%の高成長が続き、2016年には171億ユーロに達する見通しだ(下のグラフを参照)。

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このためIT企業の視線は熱く、ドイツテレコムのオーバーマン社長は「パソコンのアーキテクチャー(設計思想)は時代遅れだ。ポストパソコンの時代が始まった」と述べ、ユーザーのハードウエア内にデータやソフトを保存する時代は終わったとの認識を提示。独自のクラウドサービスを開始すると発表した。中小企業向けのサービス商品「ビジネス・マーケットプレース」を今夏に発売し、データ保存のほか、顧客管理や簿記など業務用ソフトを提供していく。一般消費者向けには25ギガバイトまで無料のデータ保存サービス「テレコム・クラウド」を売り込む。電気通信サービス事業の業績が頭打ちとなっていることもあり、クラウドにかける期待は大きい。

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「ドイツ・クラウド」でデータの厳格管理をアピール

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だが、それとは裏腹に企業や消費者の間ではクラウドへの警戒感や不信感が根強い。ドイツ銀行の調べによると、国内の中小企業の過半数はクラウド導入を視野に入れていない。クラウドを利用するのは中小企業360万社のうち12%にとどまるとの指摘もある。データ喪失や流出の懸念が解消されないためだ。

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パソコン大手の米ヒューレット・パッカードはこうした事情を踏まえ、新サービスプロジェクト「cサービシズ」を打ち出した。どのデータをクラウドに保存するかを顧客企業が自由に選択できるようにしたのがポイント。顧客は機密度の高いデータを手元のサーバーにとどめ、その他のデータのみをクラウドに保存することができる。

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マイクロソフトはクラウドを利用できる業務用ソフト「オフィス365」で、欧州連合(EU)の厳しいデータ管理基準を満たしたサービスを提供する。これにより、データ紛失などに伴う法的責任を顧客企業が問われないようにする。

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ドイツはデータ保護規定が特に厳しい。このため同国のIT企業の間にはドイツの法規に対応したクラウドサービス(ドイツ・クラウド)を看板とする構想も出ており、ボーダフォンの独法人はクラウド用データセンターをもっぱらドイツに設置する意向だ。そうした取り組みがセキュリティの向上にどの程度つながるかには疑問の声も出ているが、少なくともユーザーに安心感を与える効果は期待できるようだ。

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