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2012/3/7

経済産業情報

遠距離物体でも成分分析が可能に、危険物検査への応用に期待

この記事の要約

レーザー光を照射して得られた光を手がかりに、離れた場所にある物体の化学成分を非破壊で測定する新たな技法をウィーン工科大学の研究チームが開発した。ラマン分光法という手法を用いて、高性能望遠鏡と超高感度センサーでわずかな光を […]

レーザー光を照射して得られた光を手がかりに、離れた場所にある物体の化学成分を非破壊で測定する新たな技法をウィーン工科大学の研究チームが開発した。ラマン分光法という手法を用いて、高性能望遠鏡と超高感度センサーでわずかな光をとらえて分析する。コンテナなどに遮蔽された物体でも測定できるという(特許出願済み)。チームは空港などの公共施設における危険物検査技術の改良につながると期待を寄せる。

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爆発物の測定では、検査中に何かのはずみで発火装置が作動して爆発を起こす恐れがあるなど、大きな危険を伴う。このため、分解・破壊することなく被検体の成分を測定できる(非破壊測定)とともに、万が一爆発してもある程度の安全を確保できる距離を保てることが望ましい。だが、従来の測定システムでは被検体と検査装置の間の距離を離すことはできないため、研究チームは数十メートル先からでも成分を分析できる技術の開発に取り組んだ。

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チームが注目したのはラマン分光法という技法だ。物質に光を照射すると、反射、屈折、吸収などのほかに散乱と呼ばれる現象が起こる。この散乱光のうち、分子振動によって入射光とは異なる波長に散乱されるラマン散乱(非弾性散乱)をとらえて分光し、得られたスペクトルから分子レベルの構造を解析するのが同技法の仕組み。

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ただ、ラマン散乱光はもともと非常に微弱なうえ、被検体との距離が離れるとキャッチできる光はさらに低減する。チームは超高感度のセンサーと望遠鏡を採用するとともに、わずかの変化から最大限の情報を読み取るためのアルゴリズムを開発、100メートル離れた場所にある爆発物を検知することに成功した。

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研究プロジェクトでは産業界のほか、スペインの治安警察隊(グアルディア・シヴィル)とオーストリア軍からも協力を得たという。

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