社員の採用面接を行う場合、企業は応募者に対し交通費などの必要経費を支給しなければならない。これは受託した任務の遂行に必要な経費は委託者が負担するとした民法典670条に基づく義務である。このルールに絡んだ係争でラインラント・ファルツ州労働裁判所が2月に判決(訴訟番号:3 Sa 540/11)を下したので、ここで取り上げてみる。
\裁判を起こしたのは企業の採用募集に応募した男性。採用面接はC市のC通りにある社長の自宅で2011年2月24日18時から行うことになっていた。
\原告男性はカーナビを利用して社長宅に向かったが同宅が見つからなかったため、応募先企業に電話連絡。電話を受けた社員はインターネットの地図サイトでC通りを見つけたが、道順をうまく説明できなかった。
\同男性はこれを受けて応募を取り下げたうえで、交通費61.80ユーロを被告企業に請求。拒否されたため提訴した。
\第1審のマインツ労働裁判所は原告の訴えを棄却し、第2審のラインラント・ファルツ州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、原告は約束した日時に面接場所に出向かなかったと指摘。「受託した任務」を遂行していない以上、交通費の支給は請求できないと言い渡した。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。
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