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2012/5/2

経済産業情報

カーエアコン用新冷媒、欧州委が12年末まで導入猶予

この記事の要約

カーエアコン用の新規冷媒として2011年から欧州連合(EU)域内で販売される新車への使用が義務づけられた「R1234YF」について、EUの欧州委員会は今年末まで導入を猶予することを決めた。同製品を独占生産する米ハネウェル […]

カーエアコン用の新規冷媒として2011年から欧州連合(EU)域内で販売される新車への使用が義務づけられた「R1234YF」について、EUの欧州委員会は今年末まで導入を猶予することを決めた。同製品を独占生産する米ハネウェルとデュポンの工場新設が遅れ、品薄が続いているためとしている。同冷媒をめぐっては安全性をめぐる議論が続いており、採用に消極的な独メーカーにとっては若干の時間稼ぎとなったようだ。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が4月30日付で報じた。

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欧州委の公式見解によると、ハネウェルとデュポンが中国・常熟に建設中の工場に対し現地当局が規制を強化。この結果、工場完成・稼働開始の延期を余儀なくされているため導入延期を認めた。

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EUでは地球温暖化防止策の一環として、これまでカーエアコン用冷媒として使われてきた代替フロン(HFC-134aなど)に代わり、地球温暖化係数(GWP)150以下の冷媒をカーエアコンに使用することが11年から義務づけられた。これを受けて独自動車業界は、HFO1234YF(商品名:R1234YF)の採用を決定した。ハネウェルによると、HFC-134aのGWPが1430に達するのに対し、R1234YFはわずか4と、温暖化効果が極めて低い。

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ただ、同冷媒は従来の不燃性冷媒と異なり、わずかながら燃焼性がある。このため、連邦環境庁(UBA)やドイツ環境支援協会(DUH)は、衝突事故などで万が一引火すると有害なフッ化水素が発生する恐れがあると懸念を示していた。

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同製品の安全性は技術監査機関TUeV Rheinlandが自動車業界の依頼を受けて実施した鑑定で、「従来品と変わらない」としてお墨付きが得られている。だが、同鑑定書は「内容が難解すぎる」との理由で公開されておらず、安全性をめぐる不安が完全に払しょくされたとは言い難い。

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独メーカーですでに同冷媒を採用したのはダイムラーのみ。しかも一部モデルの計数百台にとどまる。供給が不足していると苦言を呈するメーカーが1社もないことからも、同冷媒の使用に消極的な姿勢がみてとれる。

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