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2012/6/27

経済産業情報

健保医へのリベート、贈収賄罪適用されず

この記事の要約

特定の医薬品を処方する見返りとして金品を受け取った健保医とそれを提供した製薬会社の職員を刑法で裁けるかどうかをめぐる係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は22日、製薬会社、健保医はともに贈収賄罪を適用されないとの判断 […]

特定の医薬品を処方する見返りとして金品を受け取った健保医とそれを提供した製薬会社の職員を刑法で裁けるかどうかをめぐる係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は22日、製薬会社、健保医はともに贈収賄罪を適用されないとの判断を示した。健保医は刑法典に規定する公職人には該当せず、現行法では裁けないとしている(訴訟番号:GSSt 2/11)。

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今回の係争で訴えられていたのは、複数の開業医に「処方せん管理」の謝礼として計1万8,000ユーロの金券を渡していた製薬会社の医薬情報担当者(MR)。当該の行為は贈賄罪に当たるとする前審判決を不服として上告していた。

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BGH大刑事部(der Grosse Senat fuer Strafsachen)の裁判官は判決理由でまず、◇公的健康保険は高い公益性、公共性をもち、公務に準じる運営機関とみなすことができる◇公的健保の職員も刑法典(StGB)第11条第1項第2号c目が規定する「公職人」の身分に当たる――と前置きしたうえで、健保医は公的健保の業務や機能を全うするため雇用された職員ではなく、刑法典第334条に規定する「公職人」には当たらないと指摘。また、健保医は自らの意思で保険診療を引き受けている自営業者(民間人)であり、刑法典299条(業務上の贈賄)で処罰の対象となる「事業所(今回のケースでは公的健保)から委嘱を受けた者または被雇用者」にも当たらないとして、いずれの条項によっても処罰の対象にならないと言明した。健保医に謝礼を渡したMRについても贈賄罪で処罰はできないとしている。

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大刑事部の裁判官は、今回の案件では対応する刑罰規定がないため現行法で裁けないことを強調し、健保医への贈収賄を処罰の対象とするか否かは立法者(議会)の判断だと締めくくった。

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