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2012/9/26

ゲシェフトフューラーの豆知識

事業所委への大量解雇計画通知、サイン漏れは無効か

この記事の要約

従業員数20人以上の企業が大量解雇を計画している場合、雇用主はその理由や解雇対象者の数、解雇の実施時期、解雇対象者の選別基準、解雇一時金の支給基準などについて事業所委員会(Betriebsrat)に文書で通知しなければな […]

従業員数20人以上の企業が大量解雇を計画している場合、雇用主はその理由や解雇対象者の数、解雇の実施時期、解雇対象者の選別基準、解雇一時金の支給基準などについて事業所委員会(Betriebsrat)に文書で通知しなければならない。これは解雇保護法(KSchG)17条2項に記されたルールである。

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ところで、この通知書にサインすることを雇用主が忘れた場合、解雇は無効となるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が20日に判決(6 AZR 155/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判は会社更生手続きの適用を受けた企業の管財人を相手取って解雇通告を受けた女性社員が起こしたもの。

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同管財人は経営再建に向けて大量解雇計画案を作成し、事業所委員会に通知。その後に同委と協議し、2009年10月15日に解雇計画の内容について最終合意した。合意文書のなかには事業所委がKSchG17条2項に従って管財人から同計画案の通知を受けたことが明記されていた。

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ただ、同計画案には管財人の署名が記されていなかった。これを知った原告女性は、法律で書式が定められている場合、文書の発行者は手書きの署名を行わなければならないとする民法典(BGB)126条1項の規定を根拠に事業所委に対する解雇計画案の通知は法的な要件を満たしていないと主張。解雇無効の確認を求めて提訴した。

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第1審と第2審は原告の訴えを棄却。最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、管財人の署名がなかったのは確かに不備だとしながらも、KSchG17条2項に従って管財人から解雇計画案の通知を受けたことを事業所委が合意文書のなかで承認したことで不備(署名漏れ)は解消されたとの見解を示した。

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