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2013/4/17

総合 - ドイツ経済ニュース

最終保管所選定のロードマップで国と州が合意

この記事の要約

ドイツのアルトマイヤー連邦環境相と国内16州政府、および左翼党を除く連邦議会会派は9日、国内の原子力発電所で発生した高濃度放射性廃棄物の最終保管地の選定に向けた基本問題を、連邦議会(下院)と連邦参議院(州政府の代表で構成 […]

ドイツのアルトマイヤー連邦環境相と国内16州政府、および左翼党を除く連邦議会会派は9日、国内の原子力発電所で発生した高濃度放射性廃棄物の最終保管地の選定に向けた基本問題を、連邦議会(下院)と連邦参議院(州政府の代表で構成される上院)が設置する調査委員会で審議することを取り決めた。最終保管地の選定基準を同委で策定したうえで、具体的な候補地を選定。2031年までに設置場所を決定する予定だ。

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ドイツではこれまで、ニーダーザクセン(Nds)州のゴアレーベンにある岩塩鉱跡地が最終保管地候補とされてきた。だが、同跡地については地質学上、最終保管に適さないとの批判があるほか、地元住民の反対運動も根強いため、連邦政府は11年11月、最終保管地の選定を仕切り直す目的で、選定方法について16州の政府と協議を開始した。

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今回の取り決めは連邦政府とNds州政府が3月下旬に取りまとめた合意に沿った内容で、科学的にみて適切な場所を候補地にするとの原則が明確に定められた。このためゴアレーベンが再び候補地になる可能性を排除していない。

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調査委員会は連邦、州、環境保護団体、経済界、労組、教会の代表および科学者で構成され、委員定数は24人。連邦政府と州政府は今回、最終保管地選定法案を7月の連邦議会と連邦参議院で可決させたうえで、今秋にも同委を立ち上げることを取り決めた。

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同委は15年末までに最終報告書をまとめ上げる。議論の透明性を確保するため、審議は原則として公開する。

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議会は同報告書をもとに最終保管地を選定する。両院は候補地の絞り込みと候補地の地質調査実施に際して必要があれば決議を行い、決定手続きの正当性を確保する方針。保管開始時期は2040年を目指している。

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選定費用の負担、原子力業界は拒否

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最終保管地の地質としては岩塩、泥岩および花崗岩などの結晶質岩が適切とされている。連邦地学・資源庁によると、これらの地質は国内ではニーダーザクセン、ブランデンブルク、ザクセン・アンハルト、メクレンブルク・フォーポマーン、バーデン・ヴュルテンベルク、ノルトライン・ヴェストファーレン、バイエルンの7州にある。

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花崗岩には堅固で高温に強く溶解しにくいというメリットがあるものの、亀裂の自動修復効果がないという弱点がある。岩塩は可塑性による亀裂の自動修復効果があるものの、耐水性に問題があるほか、花崗岩に比べて堅固性・安定性も低い。また、泥岩は水密性が高いものの、これも花崗岩に比べ堅固性・安定性が低い。

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『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、どの地質を選定するかは貯蔵した廃棄物を数十年あるいは数百年後に取り出せるようにするかどうかにも大きく左右されるため、調査委員会が取り出し可能な地層を最終保管場所の条件とすると、岩塩層は選択肢から消える。

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最終保管地の新たな選定・調査に要する費用は20億ユーロ強とすることを法案に盛り込む。ただ、ゴアレーベン岩塩鉱跡地の調査費用が16億ユーロに達していることを踏まえると、実際の額は大きく膨らみそうだ。

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選定費用は原子力発電事業者に負担させる方向だ。これに対しエネルギー業界は、ゴアレーベンの適性調査費用を原子力法に基づいて負担してきた事実を指摘。同岩塩鉱跡地の調査が終了していないにもかかわらず、新たな選定手続きの費用負担を押し付けるのは違法だとし批判している。

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今回の合意では英仏の再処理工場にある放射性廃棄物をゴアレーベンの中間保管所に輸送する計画の取り止めも取り決められた。最終保管所の選定作業に対する地元住民の警戒感を取り除くことが狙いで、該当する計26個の放射性廃棄物貯蔵容器は国内の他の保管地に輸送される予定だ。ドイツ北部のブルンスビュッテル原子力発電所が有力候補と目されている。ゴアレーベン中間保管所をめぐっては、政府は同施設をなし崩し的に最終保管所にする考えだとの批判がある。

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