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2013/4/17

ゲシェフトフューラーの豆知識

就労に支障のある慢性疾患は「障害」=欧州司法裁

この記事の要約

欧州司法裁判所(ECJ)は11日に下した判決で、就労に支障のある慢性疾患も「障害」の範疇に入るとの判断を示した(訴訟番号:C-335/11、C-337/11)。慢性疾患を持つ被用者は雇用問題で障害者と見なされることを意味 […]

欧州司法裁判所(ECJ)は11日に下した判決で、就労に支障のある慢性疾患も「障害」の範疇に入るとの判断を示した(訴訟番号:C-335/11、C-337/11)。慢性疾患を持つ被用者は雇用問題で障害者と見なされることを意味するため、ドイツでも今後、そうした被用者が欧州連合(EU)指令に基づく国内法(一般平等待遇法=AGG=)を根拠に労働訴訟を起こす可能性がある。

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裁判はデンマークの労働組合が病気を理由に解雇された被用者2人の代理として起こしたもの。同国では1年間に120日以上、病欠した被用者の解雇予告期間を1カ月に縮小するルールがあり、2人は同ルールに基づいて解雇された。労組は訴状のなかで、◇雇用主は2人を解雇するのでなく、就労時間を短縮して勤務できる体制を構築しなければならない◇2人の病欠は病気による障害が原因であり、長期病欠者の解雇予告期間短縮ルールを適用するのは適切でない――と主張。解雇を不当として損賠賠償請求訴訟を起こした。

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デンマークの海洋・商業裁判所は「障害」の概念が問題になるとしてその解釈を欧州司法裁に要請。また、(1)解雇された2人の勤務時間を短縮するのが適切な措置かどうか(2)長期病欠者の解雇予告期間短縮ルールが雇用と職業における平等を定めた欧州指令(2000/78/EG)に抵触していないか――の2点について判断を仰いだ。

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欧州司法裁は今回まず、就労に支障のある慢性疾患は障害に当るとの新解釈を示した。2006年に下した判決では障害と病気は異なるとの判断を示していたが、EUがその後、国連の障害者権利条約に署名したことを受け、障害の定義を変更した。

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裁判官はそのうえで、(1)の就労時間短縮については適切な措置だと指摘。ただ、そうした措置を雇用主が取るべきかどうかはデンマークの裁判所が決定すべき問題だとの判断を示した。決定の際は労働時間短縮に伴う雇用主の負担が極端に大きくならないかどうかがポイントになるとの見方を示した。

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(2)については、慢性疾患も含めて障害を持つ被用者は健康な被用者に比べて病気で休業するリスクが高いと指摘。長期病欠者の解雇予告期間を短縮するルールは原則としてEU指令に違反するとの判断を示した。ただ、同ルール正当な目的を持ち、それを達成するために必要なである場合はEU指令に抵触しないとも指摘。デンマークの海洋・商業裁に対しこれを踏まえて判決を下すよう指示した。

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