最先端の情報通信技術を用いて渋滞などの解消を目指す「高度道路交通システム(ITS)」産官学協同プロジェクト「simTD」の公道実証試験の評価結果が20日、発表された。渋滞・障害物・天候情報などの精度はいずれも高く、実用に耐えるレベルにあることが確認できたと結論づけており、プロジェクトに参加したダイムラー(メルセデス・ベンツ)は自社モデルへの同技術搭載に意欲をみせている。
\simTD(Safe Intelligent Mobility-Test Area Germany)は、車車間通信や路車間通信などのC2X(car-to-X)通信技術を活用して渋滞、工事(障害物)、天候、交通管制(信号、標識)情報などのデータを共有し、安全で効率的な道路交通システムの実現を目指すプロジェクト。ダイムラー、アウディ、ボッシュ、ドイツテレコム、フラウンホーファー研究機構、ヘッセン州交通省、フランクフルト市など17機関が参加する。予算総額は6,900万ユーロで、経済技術省(BMWi)、連邦教育研究省(BMBF)、連邦交通建設省(BMVBS)がこのうちの4,000万ユーロを拠出する。
\公道を利用した実証実験は2012年8月にスタート。120台の試験車両を投入し、フランクフルトを中心とする南北約40キロメートル(㎞)、東西10㎞のエリア内にあるアウトバーンと一般道、フランクフルトの市街地(主にマイン川南岸地域)で、半年間にわたってデータを収集・分析した。試験車両が走行した距離は1週間当たり合計6万キロに及んだという。
\渋滞情報では、試験車両は互いに走行速度を知らせ合っており、高速道路などで一定時間、低速走行しているとその情報が即座に他の車両に伝えられる。これによって後続車のドライバーは渋滞最後尾に達するほぼ30秒前に警告を受けとり、追突事故を防ぐことができたという。また、障害物情報では、ある車両が停止する、または別の車両が何かをよけるような走り方をすると、障害物があると判断され、他の車両に素早く情報が伝えられる。ドライバーが手動で情報を発信し、他の道を通るよう他のドライバーに伝えることもできる。
\実証プロジェクトでコーディネーター役を務めたダイムラー(メルセデス)の担当者は週刊誌『シュピーゲル』に対し、年内にも一部のモデルを対象に後付け方式でシステムが利用できるようにする方針を明らかにした。ただ、積極的な姿勢を示す自動車メーカーはいまのところダイムラーのみで、別のメーカーは「まず国がC2Xのインフラを整備してからでないと」と様子見の姿勢だ。
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