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2013/7/31

総合 - ドイツ経済ニュース

電機大手シーメンス、レッシャー社長が辞任

この記事の要約

電機大手の独シーメンスは31日、ペーター・レッシャー社長が同日付で辞任すると発表した。業績不振のほか、同社長の統率力に対する社内と市場の懸念を受けた措置で、2017年の任期満了を待たずに退任する。実質的には解任された格好 […]

電機大手の独シーメンスは31日、ペーター・レッシャー社長が同日付で辞任すると発表した。業績不振のほか、同社長の統率力に対する社内と市場の懸念を受けた措置で、2017年の任期満了を待たずに退任する。実質的には解任された格好。後任にはジョー・ケーザー財務担当取締役が就任する。

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シーメンスは25日、14年9月期に中核4部門の売上高営業利益率を12%以上へと引き上げるとした目標を達成できないとの見通しを明らかにした。市場環境が悪化したためとしている。レッシャー社長の解任観測はこの時点で出ていた。

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同社は昨年11月、組織再編プログラム「Siemens2014」を発表した。不採算事業からの撤退や事業拠点の集約、人員削減などを通してコストを63億ユーロ圧縮し、売上高営業利益率を12年9月期の9.5%から少なくとも12%に引き上げるという内容で、レッシャー社長は最近まで、目標を達成できると強調していた。

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市場環境が厳しいことについては競合のアルストムやABBも指摘している。ただ、シーメンスの場合は業績不振の原因を自ら作り出したという事情もある。

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同社は08年12月、高速鉄道「ICE3」をベースに開発した動力分散方式車両「Velaro D」16編成をドイツ鉄道(DB)から受注。当初は納期を11年末としていたが、技術的な問題の発生を理由にすでに何度も納入を延期しおり、現在は14年までずれ込むことが避けられなくなっている。これに伴う損出額は1億ユーロのケタ台に上るもようだ。

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北海の洋上風力発電パーク4カ所と陸上を結ぶ送電設備の敷設も大幅に遅延。損出額はすでに8億ユーロに膨らんだ。

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イスラエル企業Solel Solar Systemsを買収して09年に本格参入した太陽熱発電事業もレッシャー社長が犯した過ちだ。当時は太陽熱発電の将来性が高いと思われたが、太陽光発電のコスト大幅に低下したことで、計算に狂いが発生。シーメンスは10億ユーロの損失を出した。売却を模索したものの、買い手が現れないため、来春までに清算する。

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こうした問題の背景の1つとして、事業の拡大を急ぐあまり、消化できない恐れがあるにもかかわらず受注を獲得したことが指摘されている。

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市場は社長交代を歓迎

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シーメンスのような巨大企業であれば、個々の事業で問題が出ることはある程度、避けられないものの、大きな問題が数多く起これば、経営責任を問う声は大きくなる。

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Siemens2014は苦境に追い込まれたレッシャー社長が起死回生を狙って打ち出した策と言える。だが、1万人規模のリストラを伴うことから従業員の間には動揺が広がった。経営の失敗の付けを従業員に転嫁する措置とみられたようだ。

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メディア報道によると、同プログラムは具体的な内容の作成と実行が各事業部門に任せられ、全体としてのまとまりを欠いていた。このため計2万件もの具体策が作成されたものの、効果は上がらず、5月には13年9月期の利益目標引き下げを余儀なくされた。

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この頃にはすでに、14年9月期の利益率目標の達成も極めて難しいことが監査役会に伝えられており、レッシャー社長に対する風当たりは強くなっていた。

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レッシャー氏はシーメンスが初めて社外から招へいした社長。就任当時の07年、同社は贈賄スキャンダルに揺れており、社内から社長を登用すると捜査の対象になる可能性を排除できなかったため、あえて外部の人材に白羽の矢を立てた。同社長は腐敗体質の改善では成果を上げた。ただ、シーメンスという長い歴史を持つ巨大組織をスムーズに動かす能力や、市場とのコミュニケーション能力が欠けていた。

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ケーザー次期社長は1980年に入社したたたき上げの人材で、社内事情に精通している。利益率目標の達成が難しいことを早い段階で示唆するなど情報の発信能力も高く、市場は社長就任を歓迎している。

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