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2013/8/7

総合 - ドイツ経済ニュース

大口需要家向け送電料ルール変更へ、全額免除の廃止を閣議決定

この記事の要約

ドイツ政府は7月31日の閣議で、送電料令(StromNEV)の改正案を承認した。大口需要家を対象に送電料金の負担を全額免除するルールを廃止し、一定の負担を義務づけるという内容。全額免除ルールが欧州連合(EU)の欧州委員会 […]

ドイツ政府は7月31日の閣議で、送電料令(StromNEV)の改正案を承認した。大口需要家を対象に送電料金の負担を全額免除するルールを廃止し、一定の負担を義務づけるという内容。全額免除ルールが欧州連合(EU)の欧州委員会から批判を受けたほか、国内の裁判所も無効判決を下したことで政府は改正を余儀なくされた格好だ。すでに州政府の代表で構成される連邦参議院は承認しており、公示とともに発効する。

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送電料収入は高圧送電網の敷設と予備発電所(コールドリザーブ)の維持資金を確保するために用いられる。

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ドイツは原発を全廃し再生可能エネルギーの普及を加速する「エネルギー転換政策」を2011年に打ち出した関係で、高圧送電網の整備と予備発電所の維持が大きな課題となっている。主に同国北部の風力発電パークで生産された電力をこれまで原発依存度の高かった南部地域に送るとともに、電力供給量が天候に大きく左右される再可エネ発電の補完役としてコールドリザーブの火力発電所を維持することが必要不可欠となっているためだ。

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だが、送電料負担を全額免除することに対してはデュッセルドルフ高等裁判所が平等原則に反し認められないとする判決を3月に下した。欧州委員会もEUの国家補助規則に抵触している可能性があるとして本格調査を開始しており、政府は対応を迫られていた。

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現行の送電料令では、消費電力量が年100ギガワット時以上で電力使用時間も7,000時間以上の企業に対し、送電料負担を全額免除している。改正案が施行されると、年消費量100ギガワット以上、使用時間8,000時間以上の企業は送電料の10%を負担(90%免除)。同7,500以上~8,000時間未満の企業は15%(85%免除)、7,000以上~7,500時間未満の企業は20%(80%免除)を負担するようになる。政府は大口需要家の負担をなおも大幅に免除する理由として、送電網の負担軽減と安定、送電コストの低下に寄与していることを挙げ、その正当性を強調している。

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来年からは各大口需要家が送電網の負担軽減に実際にどの程度、貢献しているかを測定。これら需要家の送電料負担に反映させるようにする。

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新ルールが導入されても、送電料負担の軽減措置を受けない企業や消費者の負担額はあまり低下しないもようだ。連邦経済省の試算によると、大口需要家の送電料負担率が100%に上昇しても、標準世帯の電力料金は年10ユーロ程度しか下がらないという。

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