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2013/8/21

総合 - ドイツ経済ニュース

エジプト危機、ドイツ企業は冷静に対応

この記事の要約

エジプト情勢の緊迫がドイツ企業の現地事業に大きな影響を与えている。危険を回避するため事業拠点を一時的に閉鎖。駐在員を引き上げた企業も多い。ただ、同国を含む中東・北アフリカ地域では2年前の2011年にも民主化運動・政権転換 […]

エジプト情勢の緊迫がドイツ企業の現地事業に大きな影響を与えている。危険を回避するため事業拠点を一時的に閉鎖。駐在員を引き上げた企業も多い。ただ、同国を含む中東・北アフリカ地域では2年前の2011年にも民主化運動・政権転換(アラブの春)が起きており、企業は状況を冷静に判断して行動しているようだ。

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エジプトでは7月上旬の軍事クーデターで失脚したモルシ前大統領の支持派が首都カイロを中心に激しい抗議活動を展開している。これに対し治安部隊は今月14日、座り込みデモを行うモルシ派の強制排除を開始。17日までの4日間に700人以上が死亡した。19日にもシナイ半島で警察官25人が武装勢力の攻撃で死亡するなど混乱が続いている。

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こうした事態を受け、ドイツ政府は16日、エジプトへの渡航自粛勧告を出した。旅行大手のTui、トーマス・クック、Der Touristk(流通大手Reweの旅行ブランド)は同国向けのパック旅行をすべて中止。他の国への旅行に振り替えなどの措置を取っている。航空大手エアベルリンはエジプト向けフライトの新規予約受付を停止した。

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危機管理コンサルティング会社Result Groupが『ヴェルト』紙などに明らかにしたところによると、「名だたる企業はエジプトからの従業員とその家族の退避を数週間前に始めていた」という。イスラム教のラマダン(断食月)が 7日で終わると、翌日から情勢が再び緊迫することが予想されていたためで、同社は顧客企業に事前退避を勧告していた。企業ソフト大手のSAPはカイロにある販売拠点を一時閉鎖した。

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従業員に送迎サービスも

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ただ、エジプトで事業を展開するドイツ企業は約80社に上ることもあり、現地で業務を続ける企業も多い。流通大手のメトロは情勢緊迫を受け、16、17両日にカイロの2店舗と事務所を閉鎖したものの、18日には業務を再開した。夜間外出禁止令で19時から6時までは外出が禁止されているため、閉店時間を繰り上げている。また、従業員にはシャトルバスサービスを提供し、通勤の便を図っている。

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現地でノックダウン生産を行う自動車大手のダイムラーとBMWも15日に操業を停止したものの、18日から通常の体制に復帰した。ダイムラーの広報担当者はメディアの問い合わせに対し、「情勢を注意深く見守っており、従業員ともコンタクトを保っている」と回答。治安上の懸念が高まれば必要な措置を速やかにとる方針を明らかにした。

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化学大手のBASFは15日から17日にかけてカイロ事務所とサダトシティにある建設化学工場で業務を見合わせたものの、18日に再開した。

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化学大手のバイエルはカイロの事務所を現在閉鎖中で、従業員およそ190人に対し自宅勤務を命じている。また、現地雇用規模が1,000人と大きいティッセンクルップは自宅待機を命令。一部地域への旅行を禁止している。

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自動車部品大手レオニは現地に3工場を持ち、雇用規模は4,500人に達する。同社は14日午後の生産を停止。15日には従来の3シフト体制から2シフト体制に切り替えた。レオニはモロッコ、チュニジア、エジプトを合わせた3カ国で世界の従業員の44%に当たる2万4,000人を雇用している(2011年時点)。

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中堅企業も踏ん張っている。浴室家具メーカーのDuravitはカイロで2工場を操業。アクリル製浴槽のほぼ全量を生産している。現地雇用規模は3,000人で、同社全体の半分を占める。両工場の操業を長期停止すると、その痛手を相殺することは難しい。

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現地情勢の緊迫を受けて同社は工場とオフィスの警備体制を大幅に強化した。また夜間外出禁止令を受けて生産シフト数を削減。従業員が19時前に自宅に戻れるよう配慮している。

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ドイツ商工会議所連合会(DIHK)によると、モルシ派の抗議は軍と政府に向けられており、外国企業は標的になっていない。また、「外資は(11年の)革命を経験」していることもあり、今回の騒乱を理由にエジプトからの撤退を検討するドイツ企業はないという。

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