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2013/8/28

総合 - ドイツ経済ニュース

ダイムラー車の登録拒否、仏最高裁が仮差し止め

この記事の要約

独ダイムラー製の新車に欧州連合(EU)での使用が今年から禁止されたカーエアコン冷媒を用いているのはEU法に違反するとしてフランス当局が新車登録の受付を拒否している問題で、同国の最高行政裁判所に当る国務院は27日、登録拒否 […]

独ダイムラー製の新車に欧州連合(EU)での使用が今年から禁止されたカーエアコン冷媒を用いているのはEU法に違反するとしてフランス当局が新車登録の受付を拒否している問題で、同国の最高行政裁判所に当る国務院は27日、登録拒否を差し止める仮処分決定を下した。これにより問題となっているモデルは当面、新車登録が認められることになる。ただ、EUの欧州委員会はダイムラーと、同社の姿勢を擁護するドイツ政府を批判しており、冷媒をめぐる争いは今後も続く見通しだ。

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EUでは温暖化防止策の一環として、これまでカーエアコン用冷媒として使われてきた代替フロン(R134aなど)に代わり、地球温暖化係数(GWP)150以下の冷媒を使用することが今年1月から義務づけられた。この基準を満たすのは現在、米ハネウェルとデュポンが生産する新冷媒R1234yfに限られる。ほとんどのメーカーは同ルールを順守しているものの、ダイムラーは高温のエンジンルーム内で引火性を持つことが確認されたとして同冷媒の採用を中止。これまでに引き続きR134aを搭載している。

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R1234yfを採用しなければならないのは11年1月1日以降に型式認定を受けたモデルで、それ以前に認定を受けたモデルはR134aの使用を依然として認められている。また、既存モデルの改良版として申請を行えば、新モデルであってもR134aの搭載が引き続き認められている。

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ダイムラーは「Aクラス」「Bクラス」「CLA」「SL」の4モデルについて当初、R1234yfの搭載が義務づけられる新開発の車両として型式認定を受けた。だが、昨年秋に同冷媒の採用を中止する方針を打ち出した後、これらモデルを既存モデルの改良版として独陸運局(KBA)に再申請。KBAはこれを認め、新車登録を受け付けている。

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一方、仏陸運当局は、EUの規定に見合った冷媒を搭載していないとして、6月12日以降に生産された4モデルの新車登録の申請受付を拒否。顧客に販売した4,500台が登録できない状態となっていた。

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これに対しダイムラーは、ドイツで型式認定を受けた車両の登録を認めないのは不当としてフランスで裁判を起こし、国務院は今回、ダイムラーの言い分を認める仮処分決定を下した。決定理由で裁判官は、新車登録を拒否するとダイムラーが経済的な打撃を受けると指摘。また、仏政府が登録拒否の理由とした環境への影響については小さいとの判断を示した。

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トヨタもR1234yfの搭載見合わせ

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一方、欧州委はダイムラーの4モデルの型式認定と新車登録を認めた独KBAの措置を不当と批判。ドイツに対し釈明を求めており、最終的に制裁手続きに踏み切る可能性もある。

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これに対しKBAは欧州委に提出した中間報告のなかで、R1234yf搭載車では車両設計や事故の状況次第では引火性があることを排除できないと指摘。冷媒の安全性調査を新たに実施することを求めている。KBAは外部機関に委託した調査に基づき、この見解をまとめた。

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こうした問題を受けトヨタ自動車は22日、欧州販売車へのR1234yf搭載を当面中止することを明らかにした。同社は昨年秋に実施した独自試験でR1234yfの安全性を確認したものの、欧州で繰り広げられている安全性をめぐる議論を受けて消費者の間で同冷媒への不安が高まっているため、引火の懸念がない旧冷媒R134aに切り替えた。

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トヨタは「プリウス・プラス」「レクサスGS」「GT86」の3モデルについて一時、新冷媒を搭載したが、現在は旧冷媒に戻した。ドイツで今年上半期に新車登録された同社の新冷媒搭載車は1,700台強という。

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これらの車両は2011年1月1日以前に型式認定を受けているため、トヨタの措置はEU法に抵触しない。旧冷媒をいつまで利用するかについては、安全性をめぐる問題が解明され合意が形成されれば、それに歩調を合わせるとの立場を表明した。

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