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2013/9/4

総合 - ドイツ経済ニュース

「現代自は事業所委を抑圧」、労組がOECDに提訴へ

この記事の要約

独金属労組IGメタルは現代自動車を経済協力開発機構(OECD)に提訴する意向だ。ドイツ法人の事業所委員会の活動を不当に制限したり、事業所委員を威圧していると判断したため。『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が3 […]

独金属労組IGメタルは現代自動車を経済協力開発機構(OECD)に提訴する意向だ。ドイツ法人の事業所委員会の活動を不当に制限したり、事業所委員を威圧していると判断したため。『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が3日付で報じた。同紙の問い合わせに現代自は回答を控えている。

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現代自はドイツではリュッセルスハイムに研究開発拠点、オッフェンバッハに欧州統括拠点と独販売拠点、フランクフルトにデザインセンターを持ち、従業員数は合わせて数百人に上る。

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事業所委員会(Betriebsrat)は法律に基づいて企業に設置される従業員の社内代表機関で、人事などについて共同決定権を持つ。IGメタルのクリスティアン・ブルンクホルスト執行委員(自動車業界担当)がFAZ紙に述べたところによると、現代自は事業所委に業務上必要な情報を与えないほか、共同決定権の行使を拒否している。

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また、事業所委員に対し恫喝を行うことは日常茶飯事といい、Hyundai Motor Europe Technical Center(リュッセルスハイム)のYang-Seung-wook社長が事業所副委員長に宛てた文書には「社長と上司の挨拶を無視することは社長と上司の地位と権威を損なう行為であり、名誉棄損に当たる。許容できない」と記されている。同社と事業所委員会の間ではすでに複数の裁判が行われており、事業所委に対する業務妨害と脅迫をめぐる裁判では一審で会社側が敗訴した。

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IGメタルのベルトホルト・フーバー委員長はこうした事態を踏まえ、現代自本社の鄭夢九会長宛てに文書を送付。「事業所委員に対する攻撃を即時停止し、従業員とその代表(事業所委員会)の権利を尊重する」よう要請した。これに対し同社は副会長名で、現代自はドイツの全法規を遵守していると回答したという。

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IGメタルは現代自の行為がOECD多国籍企業行動指針に抵触しているとみており、OECDへの提訴を準備中。すでに証拠集めは終了しており、数週間以内に連邦経済省に提出し審査を仰ぐ予定だ。

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現代自は欧州事業を急速に拡大しており、姉妹ブランド起亜と合わせた市場シェアは過去5年間で6.2%へと倍増した。今回の問題が大きく発展すると、ブランドイメージが傷つき、販売に響く恐れがある。ドイツではビデオカメラを通した従業員の監視や低賃金で批判を受けたドラッグストア大手のシュレッカーが2012年に経営破たんと会社清算に追い込まれるなど、企業の社会的責任に対する市民の目は厳しい。

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■■■ 事業所委員会 ■■■

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事業所体制法(BetrVG)に基づいて企業に設置される被用者の代表機関。被用者が選挙を行い委員を選出する。任期は4年。1つの企業が複数の事業所を持つ場合は各事業所委員会の代表からなる全体事業所委員会(Gesamtbetriebsrat)が設置される。また、複数の企業からなるコンツェルンではコンツェルン事業所委員会(Konzernbetriebsrat)を設置できる。

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事業所委には業務の遂行に必要な情報の提供を雇用主に請求する権利がある。特に人事、組織・技術的な変更に関しては適切な時期に包括的な情報提供を要求できる。

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雇用主が解雇を行う場合は、事業所委の意見を聴取しなければならない。

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新規採用、異動、組織替えを行う場合は事業所委の同意が必要で、同委が同意を拒否した場合は、計画を断念するか裁判所に同意拒否の差し止めを請求しなければならない。

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事業所委は始業時間や終業時間、休憩時間などについて雇用主と共同決定する権利を持つ。事業所の閉鎖や縮小に伴い整理解雇を行う場合は雇用主と交渉して社会的計画(リストラ計画)を共同作成する。

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事業所委はあくまで社内の機関であり、社外の組織である労働組合とは異なる。

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