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2013/11/13

総合 - ドイツ経済ニュース

税収見積もり上方修正、財務相は財政規律の弛緩を警戒

この記事の要約

独連邦財務省は7日、税収見積もり委員会がまとめた2013~18年の税収見通しを発表した。それによると、連邦(国)、州、市町村と欧州連合(EU)向け拠出金を合わせたドイツ全体の税収は5月の見通しを大幅に上回る見通し。経済と […]

独連邦財務省は7日、税収見積もり委員会がまとめた2013~18年の税収見通しを発表した。それによると、連邦(国)、州、市町村と欧州連合(EU)向け拠出金を合わせたドイツ全体の税収は5月の見通しを大幅に上回る見通し。経済と雇用の安定を背景に税収の拡大が続くためだが、ヴォルフガング・ショイブレ連邦財務相は次期政権の樹立に向けて現在行われている政権交渉を踏まえ、財政を大幅に拡大する余地はないとの立場を強調した。

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ドイツの税収はリーマンショックに端を発する金融・経済危機を受けて09年に減少したものの、その後は増加が続いている(グラフ参照)。このため景気対策で赤字に転落した財政収支も12年には5年ぶりに黒字転換した。

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税収拡大傾向は今年に入っても続いており、連邦と州、市町村、社会保険機関を合わせた上半期の財政収支は85億ユーロの黒字を記録。黒字幅は昨年通期の41億ユーロを大きく上回った。

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税収見積もり委は5月に発表した見通しで、税収が今後も拡大していくとの見方を示した。今回の予測では5月予測を上方修正しており、13年~17年の5年間の引き上げ額は計140億ユーロに達する(18年の税収見通しは5月予測に含まれていない)。

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各年の上方修正額は13年が53億ユーロ、14年が19億ユーロ、15年が19億ユーロ、16年が26億ユーロ、17年が23億ユーロ。13年の引き上げ額が大きいのは年初からこれまでの税収実績が5月予測を大幅に上回っているためだ。

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上方修正幅が特に大きいのは州と市町村で、5年間でそれぞれ計54億ユーロ、51億ユーロに達した。連邦は16億ユーロ、EU向け拠出金は18億ユーロ。

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連邦財政に目を向けると、12年は122億ユーロの赤字だったが13年上半期は赤字幅が22億ユーロで、前年同期の約60億ユーロから大幅に縮小した。政府は15年までに均衡財政を達成する計画で、ショイブレ財務相は「過度の歳出拡大願望によってこの目標を危険にさらしてはならない」と発言。次期政権の樹立に向けたキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)の連立交渉をけん制した。

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両党は10月下旬に政権交渉を開始した。交渉は各分野別に部会を設置して実施。部会レベルでは多くのテーマで合意が成立した。

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『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、これらの合意が実施されると、連邦の財政支出は年470億~490億ユーロ膨らむ見通しだ。公的年金関係が275億~295億ユーロと全体の半分以上を占める。子持ち世帯の負担軽減と介護サービスの拡充も大幅な歳出拡大につながる。

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これらの措置がすべて実施された場合、増税を実施しない限り連邦財政は黒字転換を果たせない。CDU・CSUとSPDのトップレベルでは巨額の歳出拡大を回避することで認識が一致しており、財政資金の手当てのメドが立たない合意内容は今後、修正・削除されるとみられている。

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