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2014/4/2

ゲシェフトフューラーの豆知識

差別的な求人広告でも敗訴しないケースあり

この記事の要約

求人の対象を若年層に制限するような広告を出すことは、一般平等待遇法(AGG)で禁じられた高齢者差別に当たる。では、そうした広告を出した企業などに訴訟目的で応募し求職者であっても、差別を根拠に損害賠償を請求できるのだろうか […]

求人の対象を若年層に制限するような広告を出すことは、一般平等待遇法(AGG)で禁じられた高齢者差別に当たる。では、そうした広告を出した企業などに訴訟目的で応募し求職者であっても、差別を根拠に損害賠償を請求できるのだろうか。この問題をめぐる係争でデュッセルドルフ州労働裁判所が1月に判断を示したので、ここで取り上げてみる(訴訟番号: 13 Sa 1198/13)。

裁判は弁護士事務所の求人に応募した60歳の弁護士が同事務所を相手取って起こしたもの。求人広告のなかには、求人対象を職業経験がないか、弁護士事務所で1~2年働いたことのある弁護士に限ると受け取れる文が含まれていた。

同求人広告に応募した原告は採用を拒否された。これを受け高齢者差別を受けたとしてAGGの規定を根拠に1万ユーロの損害賠償を請求する訴訟を起こした。

1審のエッセン労働裁判所は原告の訴えを棄却。2審であるデュッセルドルフ州労裁の裁判官も審理のなかで、原告が採用されることを目指して真剣に応募したとは思えないと指摘。求人広告の文面は差別に当たる可能性があるが、応募に真剣さが欠けるため原告が勝訴する可能性はないとの判断を伝えた。

その後、被告・弁護士事務所が福祉団体に2,000ユーロの募金を行うことを法廷で確約したため、原告は訴訟を取り下げた。