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2014/4/30

企業情報

Novartis AG―英GSKと資産交換、がん治療薬事業強化へ―

この記事の要約

スイスの製薬大手Novartis(バーゼル)は22日、英同業 GlaxoSmithKline(GSK)と資産交換を行うことで合意したと発表した。競争力の高い分野に経営資源を絞り込む戦略に沿った措置で、がん治療薬事業を強化 […]

スイスの製薬大手Novartis(バーゼル)は22日、英同業 GlaxoSmithKline(GSK)と資産交換を行うことで合意したと発表した。競争力の高い分野に経営資源を絞り込む戦略に沿った措置で、がん治療薬事業を強化する。同社は動物薬事業を米同業Eli Lillyに売却することも明らかにした。

GSKのがん治療薬群を最大160億ドルで譲り受ける。まずは145億ドルを支払い、一定目標を達成した場合は最大15億ドルを追加する。取引が成立すると、Navartisのがん治療薬売上高は16億ドル増の約130億ドルに拡大。同分野の世界最大手であるRoche(250億ドル)の約半分の水準となる。

GSKに対してはワクチン事業(インフルエンザ用を除く)を譲渡する。まず52億5,000ドルを受け取り、一定目標の達成に応じて最大18億ドルが追加される。インフルエンザ用ワクチン事業はGSK以外の企業に売却する意向だ。

GSKとの間では一般医薬品(OTC)事業を合弁化することも取り決めた。Novartisは出資比率が36.5%で、将来的に撤退する権利を持つ。

Novartisは昨年11月、事業規模がグローバルレベルに拡大しえない分野からの撤退方針を打ち出し、ワクチン、診断薬、一般医薬品(OTC)、動物薬事業を放出する意向を明らかにした。今後は特許薬、後発医薬品(Sandoz)、眼科治療薬(Alcon)の3分野に経営資源を絞り込む考えだ。

GSKは今回の取引によりワクチン、OTC薬事業を強化する。これら2事業は利益率が低いものの、特許薬事業に比べリスクが小さいというメリットがある。Novartisと共同設立するOTC薬の合弁会社は米Johnson & Johnsonに次ぐ世界2位メーカーとなる見通し。

Novartisは動物薬事業の売却に向けて競売入札を実施し、Eli Lillyへの売却を決めた。取引金額は54億ドル。

GSK、Eli Lillyとの取引はそれぞれ来年上半期、来年第1四半期に手続きが終了する見通し。Novartisに発生するコストは当初、38.5億ドル(がん治療薬群の買収価格145億ドルとワクチン薬、動物薬事業の売却益106.5ドルの差額)で、同社は手元資金と短期融資で賄う。場合によっては社債も発行する。