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2014/5/21

ゲシェフトフューラーの豆知識

女性ゆえに不採用とヘッドハンターが本人に伝達、妥当な行為か

この記事の要約

採用応募者が女性であるがゆえに採用しないことは一般平等待遇法(AGG)で禁じられた差別に当たる。では、顧客企業から人材紹介を依頼されたヘッドハンターが、紹介した人材に対し「採用されなかったのは女性であるためだ」と伝えるこ […]

採用応募者が女性であるがゆえに採用しないことは一般平等待遇法(AGG)で禁じられた差別に当たる。では、顧客企業から人材紹介を依頼されたヘッドハンターが、紹介した人材に対し「採用されなかったのは女性であるためだ」と伝えることは差別撲滅に向けた適切な行為とみなされるのだろうか。この問題をめぐる係争でフランクフルト州労働裁判所が8日に判決(訴訟番号:16 U 175/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は人材紹介を依頼した機械メーカーがヘッドハンターを相手取って起こしたもの。同社は2012年6月、セールスエンジニアの紹介を被告のヘッドハンターに依頼した。同ヘッドハンターはこれを受け9月に女性(A氏)を紹介したところ、同社から「女性はほしくない」との連絡を受けた。

ヘッドハンターは機械メーカーから紹介料の支払いを受けた後、A氏に対し採用されなかった理由を説明したうえで、弁護士に相談しAGGに基づく慰謝料請求訴訟を起こすよう勧めた。

A氏は機械メーカーを相手取って提訴。裁判で和解し、同メーカーから慰謝料8,500ユーロを受け取った。

一方、同メーカーはA氏を紹介したヘッドハンターを相手取って損害賠償訴訟を起こし、1万1,540.33ユーロを支払うよう要求した。A氏に支払った慰謝料に関連コストを加えた額を損賠請求額とした。

この裁判で2審のフランクフルト州労裁は原告勝訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、被告ヘッドハンターの行為は原告との契約に定められた守秘義務に反し、背信にも当たるとの判断を示した。

損賠賠償については3,684.97ユーロに金利を加えた額の支払いを命じた。請求額を大幅に下回るのは、A氏を差別した原告企業にも責任があると判断したため。最高裁への上告は認めなかった。