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2014/5/28

総合 - ドイツ経済ニュース

ユーロ批判の独新政党が欧州議会進出

この記事の要約

欧州連合(EU)の欧州議会選挙が加盟各国で22日から25日にかけて実施された。中道右派の欧州人民党(EPP)が第1会派、中道左派の社会民主進歩同盟(S&D)が第2会派の地位を維持した点で変わりがなかったものの、 […]

欧州連合(EU)の欧州議会選挙が加盟各国で22日から25日にかけて実施された。中道右派の欧州人民党(EPP)が第1会派、中道左派の社会民主進歩同盟(S&D)が第2会派の地位を維持した点で変わりがなかったものの、フランスと英国では反EUを掲げる国民戦線(FN)と英国独立党(UKIP)が地すべり勝利でともに第1党に躍進。ドイツでもユーロ批判の新政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が得票率7%を獲得し欧州議会進出を果たした。EUの政策と既存政党に対する有権者の不満が噴き出した格好だ。

主要会派の議席数はEPPが213(改選前274)、S&Dが190(同196)、リベラル系の欧州自由民主連盟(ALDE)が64議席(83)、緑の党・欧州自由連盟(Greens/EFA)が52(57)などとなっている。

EUでは債務・経済危機の長期化を受けて失業率が高止まりしており、既存政党などへの不満が高まっている。これを背景にフランスではルペン党首率いるFNが得票率を前回選挙(2009年)の6.3%から25%に急拡大。同国に割り当てられる74議席のうち22議席を確保した。与党・社会党の得票は14%と、前回の16.5%から低下。最大野党の国民運動連合(UMP)の21%に及ばす、3位に転落した。

欧州議会では2大会派のEPPとS&Dが合わせて403議席を確保しており、EUの政策に大きな変化が生じることはないものの、反EU派が2割近い議席を占め、一大勢力となることで、EU統合の深化にかかわる法案などは審議が難航しそうだ。

今回の選挙では、欧州委員会の委員長を欧州議会選の結果を踏まえて首脳会議で指名するというEU基本条約の新ルールが初めて適用されるため、主要会派は選挙戦で委員長候補を擁立した。EPPが最大会派となったことから、同派の候補であるジャンクロード・ユンケル氏(ルクセンブルク前首相)が新委員長に就任する公算が高い。

同氏は26日、議会でS&Dと密接に協力していく考えを明らかにした。EPPとS&Dの合計議席数は過半数ライン(376)を超えており、議会と欧州委を安定的に運営していくために左右の2大会派からなる大連立の樹立を目指すもようだ。

独有権者の大半はEUに大きな不満なし

ドイツでは欧州議会でEPPに属するキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が37.9%から35.3%へと得票率を落とした。バイエルンの地方政党であるCSUがEUに批判的な選挙キャンペーンを打ったことが裏目に出た格好。EU支持を鮮明に打ち出す中道左派の社会民主党(SPD)は前回の20.8%から27.3%へと伸ばしており、同国の有権者の大半は政治に対し大きな不満を抱いていないようだ。

だがその一方で、ユーロ解体を唱えるAfDは欧州議会選への参加が初めてであるにもかかわらず、ドイツに割り当てられた94議席のうち7議席を獲得した。AfDへの投票者のうち半数は前回選挙で棄権していたか議会進出の見込みのない小政党に投票していたことがメディアの出口調査で分かっており、AfDが既存政党やEUの政策への批判票を大量に集めたことがうかがわれる。

ドイツの連邦議会(下院)で昨年、議席をすべて失った自由民主党(FDP)は今回の欧州議会選で3.4%の票を得て3議席を確保したものの、改選前の12議席から4分の1に急落。人気の低落に歯止めをかけることができなかった。