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2014/7/16

総合 - ドイツ経済ニュース

最低賃金、来年から時給8.5ユーロ 被用者470万人が賃金増に

この記事の要約

独16州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)は11日、最低賃金法案(労使協定の自律の強化に向けた法案)を可決した。同法案はすでに連邦議会(下院)を通過しており、来年1月1日付で施行される。法定最低賃金を導入する欧州連 […]

独16州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)は11日、最低賃金法案(労使協定の自律の強化に向けた法案)を可決した。同法案はすでに連邦議会(下院)を通過しており、来年1月1日付で施行される。法定最低賃金を導入する欧州連合(EU)加盟国はこれにより22カ国へと拡大する。

ドイツには全国・全業界一律の最低賃金がこれまで存在しなかった。労使が政治の介入を排して労働条件を自主的に定める制度、「労使協定の自律(タリフアウトノミー)」が深く根づいているためで、法定賃金はこの制度に抵触するとみなされてきた。

だが、経済競争力の強化に向けて2000年代の前半に行われた構造改革(アジェンダ2010)の副作用として低賃金セクターで働く被用者が増えたことで状況が変化した。構造改革は熟練技能を持たない長期失業者が労働市場に足がかりを得るという点では一定の効果があったものの、フルタイムで働いても生活に必要な収入を稼げない就労者が発生するというねじれも生み出したためだ。

与党はこうした事態を受け、昨年11月の政権協定に全国・全業界一律の最低賃金導入を盛り込み、金額を8.5ユーロ(時給)とすることを取り決めた。

インターンにも適用

最低賃金は来年1月1日から導入され、18歳以上および、職業教育を終了した18歳未満の被用者に適用される。ただ、労使協定で独自の最低賃金を取り決めた業界では16年末まで8.5ユーロ未満の賃金が認められる。このため、全業界を拘束する最低賃金が導入されるのは17年1月からとなる。

1年以上の長期失業者に対しては就職後6カ月間、最低賃金を適用しなくてもよい。賃金水準が高いと就職できないケースが多数、出てくるためだ。このほか、農業季節労働者と新聞配達員についても例外が認められる。

最低賃金はインターン(プラクティカント)にも適用される。ただ、教育過程の一環として義務づけられているものと、学生・生徒が体験目的で行うものは最大3カ月間、適用を免除される。

最低賃金導入の効果で時給が8.5ユーロに上昇する被用者の数は15年1月時点で370万人に達し、17年1月には470万人に拡大する見通しだ。一方、最低賃金の副作用として雇用が縮小することも懸念されており、Ifo経済研究所は雇用喪失規模が90万人(フルタイ就労換算で34万人)に達すると予測している。

最低賃金の額は労使の代表で構成される「最低賃金委員会」が専門家の助言を受けて2年ごとに見直すルールで、次回は17年1月に改定される。

欧州連合(EU)加盟28カ国のなかで法定最低賃金のない国は来年以降、オーストリア、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、イタリア、キプロスの6カ国に減少する。