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2014/7/30

総合 - ドイツ経済ニュース

対ロ制裁強化、経済界に支持広がる、撃墜事件で空気一転

この記事の要約

ロシアに対する制裁の強化を支持する声がドイツの経済界内で急速に広がっている。17日にウクライナ東部で起きたマレーシア航空機の撃墜事件を受け、認識を改める財界人が増えているためだ。ドイツ政府はこれまで、国内経済への悪影響を […]

ロシアに対する制裁の強化を支持する声がドイツの経済界内で急速に広がっている。17日にウクライナ東部で起きたマレーシア航空機の撃墜事件を受け、認識を改める財界人が増えているためだ。ドイツ政府はこれまで、国内経済への悪影響を踏まえ、欧州連合(EU)による制裁強化に消極的だったが、経済界の空気が変わってきたことで、政策の余地が広がっている。

中東欧・CIS諸国との貿易振興を目的とする「ドイツ経済界東欧委員会(Ost-Ausschuss der Deutschen Wirtschaft)のエックハルト・コルデス委員長(流通大手メトロ前社長)は『ハンデルスブラット』紙のインタビュー(25日公開)で、EUが準備している対ロシア制裁強化を全面的に支持する考えを表明した。独経済界には制裁に対する懸念が強く、同委員長もこれまでそうした立場に立っていたが、マレーシア機撃墜事件を受けて厳しい姿勢に転換した。

マレーシア航空機を撃墜した犯人は現時点で特定されていないものの、ロシアの支援を受ける親ロ武装勢力の犯行である可能性が濃厚となっている。コルデス委員長はそうした認識に基づき、「(ロシアの)プーチン大統領は(ウクライナの)分離主義勢力に対し影響力を行使しなければならない。もし影響力がないのであれば、影響力を行使できるようにしなければならない」と要求した。

独商工会議所連合会(DIHK)のフォルカー・トライアー貿易部長もロイター通信に「ロシア政府の政治的な行為を踏まえると、制裁強化は理解できる」との立場だ。独産業連盟(BDI)のウルリヒ・ガリオ会長は「BDIも私個人もロシア政府の行動を受けて制裁強化が必要不可欠であることを確信するに至った」と明言する。

コンサルティング大手ローランド・ベルガーと全国紙『ヴェルト』がドイツのトップマネージャー166人を対象に実施した緊急アンケート調査では67%が制裁強化に賛成と回答した。(下のグラフ参照)

ロシア向け輸出、今年は17%以上減少

DIHKのトライアー貿易部長が明らかにしたところによると、国外事業を展開するドイツ企業の4社に1社はすでにロシア制裁の影響を受けており、売上高が計40億ユーロ失われたという。DIHKはウクライナ問題を受け、今年の独輸出成長率を従来予測の4.5%から4.0%に下方修正した。米国と欧州連合(EU)が今後、制裁を強化していくこともあり、さらなる引き下げの可能性を排除していない。

制裁の影響はロシアと米国の両国で取引をする企業で特に大きい。EUと米国とで制裁内容が異なる関係で、EUだけでなく米国の制裁規定にも抵触していないかをいちいちチェックしなければならないためだ。ロシアで取引を行うドイツの輸出型企業は50%強、米国で取引を行う企業は同70%強で、両国でともに取引を行う企業はおよそ25%に上る。

対ロ制裁を強化すれば、ロシアが対抗措置を取り、ドイツ企業も痛手を受けることが予想される。DIHKの予測では、ロシア向け輸出高は今年、少なくとも17%減少する見通しだ。

東欧委員会のコルデス委員長はこうした問題ついて、「代償を支払わなければならないのであれば、我々は支払う」と明言し、甘受する意向を示した。同時に、制裁合戦の悪循環に陥ることはあってはならないとも指摘。政策当事者に冷静な対応を呼びかけた。