欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2015/4/15

総合 - ドイツ経済ニュース

インダストリー4.0構想の実現に向け前進

この記事の要約

世界最大の産業見本市「ハノーバー・メッセ」が13日、開幕した。メインテーマは情報通信技術を駆使した「産業の統合」で過年度と変わりがなかったものの、これまで存在しなかった画期的な製品が多数、公開されており、製造業のあり方が […]

世界最大の産業見本市「ハノーバー・メッセ」が13日、開幕した。メインテーマは情報通信技術を駆使した「産業の統合」で過年度と変わりがなかったものの、これまで存在しなかった画期的な製品が多数、公開されており、製造業のあり方が今後、大きく変わっていくことが予想される。14日には「インダストリー4.0(I4.0)」構想の具体化に向けた経済界のプロジェクトが政府や労組を含むすそ野の広い組織へと発展解消しており、ドイツは「第4次産業革命」と位置づける経済の革新を全社会的に推し進めていく姿勢を明確に打ち出した。

電機大手のシーメンスは個々の消費者の注文に応じてさまざまな種類の香水を同時に大量生産できるフレキシブルな充填設備を公開した。これまでの機械では1種類の香水しか生産できなかった。同充填設備を投入すると、無駄な在庫を抱えるリスクがなくなる。

ロボットハンド製造のシュンクはロボットの指に当たる指グリッパーをインターネット経由で設計・製造できる全自動3Dプリンターを世界で初めて開発した。指グリッパーは製造工程を流れるモノの大きさや形状に合わせて作製しないとモノを適切につかめなかったり、損傷する恐れがある。これまでは設計に数時間を要したが、同社の新3Dプリンターではこれを15分へと大幅に短縮している。設計後は作製作業に移行する。

電機大手のABBは人と同じスペースで働くことができるロボット「YuMi」を公開している。ロボットが人と衝突すると人がけがをする恐れがあるため、これまでは作業スペースが柵で区分されていたが、YuMiは衝突を回避しようとするほか、人に接触すると停止するため、そうした措置を取る必要がない。

独情報通信業界連盟(Bitkom)とドイツ機械工業連盟(VDMA)、独電気・電子工業会(ZVEI)の3業界団体は2013年4月、政府のI4.0構想を受けてその具体化・実現に向けたプロジェクト「プラットフォーム・インダストリー4.0」を立ち上げた。同プロジェクトは今回のハノーバー・メッセに合わせて、官学労も参加するすそ野の広いプロジェクトへと発展解消した。産業界だけでは同構想の実現に必要な幅広い課題に対応できないことが背景にあり、新体制となったプラットフォーム・インダストリー4.0では、標準化、研究、セキュリティ、法制、労働、職業教育・研修といったテーマについて検討。11月に政府が主催する「ITサミット」で成果を公表する。

I4.0導入は自動車業界が意欲的

I4.0関係の技術を導入する企業は増えている。Bitkomが13日に発表したアンケート調査結果によると、独主要製造業では企業の44%がすでにI4.0に関連するソフトウエアを利用。「計画中」は18%、「将来的に投入することが考えられる」は24%で、「将来的にも投入は考えられない」は14%にとどまった。

アンケートはBitkomが調査会社アリスと共同で3月に実施。ドイツの主要製造業である自動車、機械、化学、電機の4部門から従業員数100人以上の企業をそれぞれ100社選んで質問を行った。

それによると、I4.0関連のソフトをすでに利用している比率が最も高いのは自動車業界で、53%に上った。これに電機(48%)、化学(42%)、機械(41%)が続く。

「将来的にも投入は考えられない」と回答した企業は自動車が7%で最も少なかった。電機は13%、機械は15%、化学は16%とやや多い。

「どの分野のソフト(I4.0関連)を利用していますか」との質問では、機械と従業員のコミュニケーションを取り持つ「ソーシャル・マシン」との回答が最も多く、28%に上った。これに僅差で、生産設備の故障を事前に予測する「プレディクティブ・メインテナンス」(27%)が続いた。生産設備と製品がコミュニケーションする「スマート・プロダクツ」は20%。企業の枠組みを超えて工場を顧客、サプラーヤーとインターネットでつなぐ「グローバル・ファシリティーズ(つながる工場)」は4%と少なく、ITを利用した作業のアシストシステムは11%にとどまった。

自らの業界でI4.0の普及度が低いとする回答は79%に上った。機械が83%で最も高く、化学は80%、自動車は76%、電機は74%だった。

I4.0のソフトを利用するメリットについては「生産プロセスの改善」との回答が76%で最も多かった。「効率化による生産コストの低下」(72%)、「稼働率の改善」(71%)、「労働体制の柔軟化」(70%)も70%台に上っている。

一方、I4.0によって企業の売上高が「増える」と予想する企業は51%で、「変わらない」の49%と大差がなかった。

インダストリー4.0の導入に伴う問題としては「大きな投資コスト」を挙げる企業が最も多く、72%に上った。これに「テーマの複雑さ」「専門人材の不足」(ともに56%)、「データ保護」(44%)が続いた。