欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2015/7/8

経済産業情報

脳腫瘍をナノ粒子で治療、商業化に道

この記事の要約

ベルリンのスタートアップ企業マグフォース(Magforce)が開発した脳腫瘍の治療法が商業ベースに乗る見通しが高まってきた。経済紙『ハンデルスブラット』が6日付で報じたもので、すでに患者の治療が始まっている。 マグフォー […]

ベルリンのスタートアップ企業マグフォース(Magforce)が開発した脳腫瘍の治療法が商業ベースに乗る見通しが高まってきた。経済紙『ハンデルスブラット』が6日付で報じたもので、すでに患者の治療が始まっている。

マグフォースは脳の神経細胞を支える神経膠細胞が腫瘍化した膠芽腫(こうがしゅ)という脳腫瘍の治療法を開発した。酸化鉄のナノ粒子を腫瘍に注入したうえで「ナノ・アクティベーター」というコンピューター断層撮影装置のような形をした装置内に患者を収容。磁界で振動させるとナノ粒子が発熱し、がん細胞を破壊する。腫瘍の消滅後に放射線治療と化学療法を行うものの、摘出手術を実施したうえで放射線治療と化学療法を行うこれまでの標準的な治療法に比べ患者の負担が小さい。また、治療コストは約4万ユーロで、従来の療法に比べて低い。

マグフォースの治療法は2010年に認可が下りたものの、これまでは医学界で十分な支持を得ることができず、実用化されていなかった。同社はこの現状を変えるためにドイツの有力医療センター6カ所の協力を受けて新たな試験を実施。医師の支持を受けることに成功した。現在はドイツの計5カ所の大学病院で同治療を受けることができる。近日中にゲッチンゲン大学病院でも受けられるようになる。

公的健康保険の適用対象リストに採用されていないものの、個別ケースとして適用されることもある。欧州全体の治療件数が年200~250件に達すると採算が取れるという。

マグフォースは同治療法を前立腺がんにも拡大したい考えで、5月下旬に米食品医薬品局(FDA)に臨床試験の認可申請を行った。