独シリコンウエハー会社買収を中国企業が断念

シリコンウエハー製造の中NSIG(ナショナル・シリコン・インダストリー・グループ)が独ワッカー・ケミーのシリコンウエハー子会社シルトロニックを買収することを断念した。NSIGの国外投資プロジェクト担当者が9日、dpa通信に明らかにした。理由については明言を避けているものの、中国資本による欧米企業買収に対する警戒感が強まっていることが背景にあるもようだ。

ワッカーは昨年6月、シルトロニックの新規株式公開(IPO)を実施した。シリコンウエハー市場は変動が激しく安定した業績を維持しにくいためで、同子会社株42.2%を売り出し、出資比率を57.8%へと引き下げた。中期的には50%未満とする考えだ。

NSIGはこうした事情を踏まえ、シルトロニックの買収をワッカーに打診。買収の方向で交渉を行ってきたが、国外投資プロジェクト担当者は同通信に「交渉は終了した」と述べ、打ち切ったことを明らかにした。

欧米企業を標的とする中国資本の買収攻勢は最近にわかに活発化しており、同国の家電大手・美的集団は独産業ロボット大手クーカの株式公開買い付け(TOB)に成功した。中国化工集団(ケムチャイナ)も巨額の資金にものを言わせてスイスの農業化学大手シンジェンタを買収する予定だ。背景には買収を通した最先端技術の取得により産業の高度化を目指す中国政府の政策があるとみられる。

こうした動きに対する欧米政府の警戒感は強く、米オバマ大統領は2日、半導体製造装置メーカーの独アイクストロンを中国の福建芯片投資基金(FGC)が買収する計画に拒否権を発動。FGCはこれを受け8日、アイクストロン買収計画を破棄した。NSIGはこうした事情を踏まえてシルトロニックの買収を断念したとみられる。

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