通勤距離規定の解釈で最高裁判断

企業が車で通勤する社員に通勤手当を支給する場合、通勤距離の算出基準を定める必要がある。そうでないと、公正かつ適切な手当の額を算定できないからである。ただ、通勤距離の算出基準を定めた文章の解釈は人によって異なることがある。そうした解釈の相違を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月の判決(訴訟番号:1 AZR 37/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判はドイツテレコム(旧国営企業)に公務員身分の社員として勤務する女性が同社を相手取って起こしたもの。同社員はテレコムの組織再編に伴い転勤し、通勤距離が大幅に長くなった。

組織再編に際して取り決めた社内協定では、再編に伴って通勤距離が6キロ以上、長くなった社員には距離の増加分を対象に手当を支給することが取り決められた。手当の額は91~101キロ未満で年1万3,509ユーロ、101~121キロ未満で同1万4,286ユーロとなっていた。

通勤距離の定義は「乗用車で通行できる、一般的にみて自宅と新しい勤務地を結ぶ最も短い区間」となっていた。

原告の自宅から新しい勤務地までの距離は一般国道を使うと144.4キロ、高速道路(アウトバーン)を使うと151.8キロだった。雇用主のテレコムは一般国道を利用したルートが通勤区間に当たると解釈。このルートの距離から以前の通勤距離(43.9キロ)を引いた100.5キロが通勤距離の増加分に当たるとして、1万3,509ユーロの手当支給を決めた。

これに対し原告は、アウトバーンを利用したルートが通勤区間に当たると主張。このルートの距離から以前の通勤距離(43.9キロ)を引いた107.9キロが通勤距離の増加分に当たるとして、1万4,286ユーロの手当支給を要求した。この要求の根拠としては、アウトバーンを利用すると一般国道ルートに比べて走行時間が32分、短いことを挙げた。

原告は一審で勝訴したものの、二審で敗訴。最終審のBAGでも敗訴した。判決理由でBAGの裁判官はまず、社内協定は労使協定や法律と同じ原則に基づいて解釈されなければならないと指摘。そのうえで、「乗用車で通行できる、一般的にみて自宅と新しい勤務地を結ぶ最も短い区間」という表現は「最も便利なルート」でなく「距離的に最も短いルート」を意味するとの判断を示した。

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