「緊急発電所」新設・運営をユニパーが落札

電力大手ユニパーは9日、ドイツ南部のイルシングでガス発電所を建設・運営することを送電網事業者テネットから受注したと発表した。新発電所は停電時の「緊急電源」として利用される。イルシングには稼働率が低いガス発電所がすでに存在するものの、法律の規定で停電時緊急電源の指定を受けられないことから、新たな発電所を設置することになった。

ユニパーは発電能力300メガワット(MW)のガス発電所を建設し、2022年10月から操業を開始する。稼働するのは停電が起きた場合に限られる。

ドイツでは発電量が天候に大きく左右される再生可能エネルギーの利用拡大を受けて、電力需給ひっ迫型の大規模な停電が発生しやすくなっている。政府はそうした事態を想定し、送電網事業者3社に計1,200MWの停電時緊急発電所を新設することを法律で認めた。ガス発電設備は速やかに起動することから、臨時電力として適している。

テネットはこれを受けてイルシングに発電所を建設することを決定。建設・運営事業者の公開入札を行いユニパーが落札した。

イルシングにはユニパーが他のエネルギー事業者と共同で運営するガス発電所が2カ所ある。それぞれ10年、11年に操業を開始した最新施設で、発電効率は60%前後と高い。

だが、再生エネの優遇政策を受けて両発電所は採算が悪い。このため運営事業者は廃止を検討したものの、電力需給がひっ迫した際の「冬季予備電源」として維持することを連邦ネットワーク庁から命じられたため、廃止できない状況となっている。これを不当として裁判で争っているものの、最終判決は出ていない。

これら既存のガス発電所を停電時緊急発電所へと改めれば新たな発電所を建設する必要はないものの、停電時緊急電源の指定を受けられるのは新たに建設する施設に限られるため、既存の発電所は予備電源にとどめざるを得ない状況だ。

停電時緊急発電所は採算が合うことからユニパーはテネットの入札に参加した。

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