設立10年以内の欧州のスタートアップ企業が2018年に投資家から調達した資金の総額は前年比11%増の212億5,000万ユーロとなり、過去最高を更新した。投資家から将来性を高く評価される企業が増えていることが大きく、調達件数も15%増えて過去最高の4,199件となった。コンサルティング大手アーンスト・アンド・ヤング(EY)が19日に明らかにした。
調達件数を国別でみると、最も多かったのはこれまでに引き続き英国で、1,051件(前年893件)を記録。これにフランス643件(605件)、ドイツ621件(507件)が続いた。上位10カ国のなかで伸び率が最も大きかったのはハンガリーで、前年の57件から2.3倍の132件へと拡大した。
資金調達額が最も多かった国も英国で、12%増の72億1,000万ユーロへと達した。これにドイツ(7%増の45億9,200万ユーロ)、フランス(31%増の33億6,300万ユーロ)が続いた。ベルギーは2.9倍の353件、デンマークも2.7倍の319件と伸び率が大きかった。
上位3カ国のなかでフランスの調達額が特に大きく増えたことについてEYは、外国人の滞在許可手続きの簡素化や国の低利融資、起業家と投資家に対する税優遇などマクロン政権のスタートアップ促進策が奏功したと指摘。ドイツはスタートアップ支援策を強化しないと調達資金面でフランスに抜かれるとして、新たな政策を促した。
資金調達件数が最も多かった都市はロンドンで、623件に上った。2位はパリ(366件)、3位はベルリン(244件)で、全体に占める3都市の割合は45%に上った。ベルリン以外のドイツの都市ではミュンヘンが97件で5位に付けた。
ロンドン、ベルリン、パリは資金調達額でも他の都市を圧倒しており、それぞれ50億1,700万ユーロ、26億1,100万ユーロ、24億8,800万ユーロに達した。欧州のスタートアップ企業が調達した資金全体の48%を3都市で占めた計算だ。
上位10都市のなかで資金調達額の伸びが大きかったのはチューリヒ(5.3倍の4億500万ユーロ)、ハンブルク(2.4倍の5億4,800万ユーロ)、ダブリン(2.3倍の4億4,800万ユーロ)、ミュンヘン(2.2倍の6億1,900万ユーロ)、ケンブリッジ(2.1倍の3億6,500万ユーロ)。ミュンヘンは4位、ハンブルクは6位に付けた。
資金調達額が最も大きかった企業はファッションECの英ファーフェッチ(Farfetch)で、5億8,300万ユーロに上った。2位は中古車販売ポータルの独アウト・アインツで、ソフトバンク系の巨大投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」から4億6,000万ユーロを獲得。3位はファッションECの独アバウト・ユー(2億6,400万ユーロ)だった。
ドイツ企業の資金調達額ランキングではアウト・アインツ、アバウト・ユーに次いで家具ECの独ホーム24(1億7,200万ユーロ)が3位に付けた。