ワイヤーカード―社長辞任、預金19億ユーロが行方不明に―

独金融サービス大手ワイヤーカード(アッシュハイム)は19日、マルクス・ブラウン社長が即日付けで辞任すると発表した。同社は外国の銀行の第三者預託口座で管理していたはずの19億ユーロの存在が確認できないことから、前日に予定していた2019年決算発表を延期。延期は4度目で、同社に対する市場の信頼は地に落ちており、18日の株価は62%も落ち込んでいだ。ブラウン社長は引責辞任した格好だ。

同社はフィリピンのBDOユニバンクとバンク・オブ・フィリピン・アイランド(BPI)に第三者預託口座を持ち、取引先間の決済を担保するための資金19億ユーロを管理していたはずだった。だが、会計事務所が19年決算報告を監査したところ、19億ユーロの存在を確認できなかったことから、18日に予定していたワイヤーカードの決算発表は延期せざるを得なくなった。

BDOとBPIは19日、ワイヤーカードとは取引がないとの声明をそれぞれ発表した。BDOのネスター・タン頭取は、ワイヤーカードの口座を証明しているとする文書はわが行の名前を偽って用いた偽造文書だと指摘。同文書にあるというBDO行員の署名も偽物だと断言した。ワイヤーカードは詐欺にあった可能性があるとして、容疑者不詳のまま告訴している。

ワイヤーカードは1999年の設立で、決済サービスを手がけている。2006年に銀行免許を取得した。ネット通販市場やスマホ決済の拡大など、支払い手続きのデジタル化を追い風に成長を続け、18年9月にはコメルツ銀行を追い落とす形でDAX(ドイツ株価指数)に採用された。昨年4月にはソフトバンクグループ(SBG)と戦略協業合意。デジタル分野で協力するほか、日本・韓国市場への進出で支援を受けることにした。SBGはワイヤーカードの転換社債およそ9億ユーロを引き受けている。

ワイヤーカードに対しては独金融サービス監督庁(BaFin)の告発を受けてミュンヘン検察当局が市場操作の容疑で捜査を進めている。ブラウン前社長は22日に逮捕された。

上部へスクロール