米除草剤訴訟でバイエルが和解、最大109億ドル支払いへ

ライフサイエンス大手の独バイエルは6月24日、同社の除草剤「グリホサート」を巡る訴訟で和解したと発表した。同剤の影響でがんを罹患したと主張する原告と、将来起こり得る訴訟の原告に最大で計約109億ドルを支払うという内容。バイエルはグリホサートの発がん性を否認しているものの、訴訟が同社の事業と社会的評価に悪影響をもたらしているうえ、財務リスクも読み切れないことから、和解に踏み切った。

グリホサートは米農業化学大手モンサントが1970年に開発した農薬。除草効果が高いことから世界で幅広く使用されているものの、リンパ腫を引き起こす疑いが持たれている。

バイエルは2018年のモンサント買収に伴い同剤を取得したことから、訴訟に直面することになった。これまでに計3件の裁判で敗訴している。

今回の和解では現行訴訟の原告に88億~96億ドル、今後がんを発症し同社を訴える可能性がある潜在的な原告に最大12億5,000万ドルをそれぞれ支払うことを取り決めた。現行訴訟では原告の約75%がすでに和解を受け入れている。今回の和解で仲裁役を務めた弁護士が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に明らかにしたところによると、残りの原告との間でも数カ月以内に和解が成立する見通しという。

バイエルは声明で、グリホサートに発がん性はないと強調したうえで、同剤の販売を今後も続ける意向を明らかにした。

バイエルは今回、モンサント買収で取得した除草剤「ジカンバ」と、モンサント製ポリ塩化ビフェニル(PCB)による水質汚染を巡る訴訟でも原告とそれぞれ和解した。ジカンバに絡んで最大4億ドル、PCBで同8億2,000万ドルを支払う。

バイエルはモンサントを630億ドルで買収した。今回の和解で最大120億ドル強を支払うことから、買収コストは実質的に750億ドルへと膨らむことになる。同社は和解費用を今後の利益と動物薬事業の売却益で賄う意向だ。和解金を支払っても投資適格級の格付けを維持できるとみている。

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