新型コロナウイルス感染症の流行を受けてドイツ企業の国外売上高は今年、大幅に減少する見通しだ。需要が幅広い分野で後退しているうえ、旅行制限が事業拡大の足かせになっているためだ。業績悪化を受けて現地で投資抑制や人員削減に踏み切る独企業が増えている。世界経済の危機が長期化すると、グローバル化が進展したドイツ経済は大きな痛手を受けることになる。
在外ドイツ商工会議所(AHK)加盟企業3,300社へのアンケート調査(7月)をもとにドイツ商工会議所連合会(DIHK)が8日発表したレポートによると、「売上高が今年、減少する」との回答は83%に達した。29%が「10~25%の減収」、26%が「25~50%の減収」を予想。「50%超の減収」との回答も15%に上った。特に旅行、宿泊業界の状況が厳しい。
新型コロナ危機に伴う悪影響としては「旅行制限」との回答が最も多く、63%に上った。国境封鎖や入国後の隔離措置が管理職や技術者、営業担当者の国外派遣を難しくしており、製品・サービス販売や調達の大きな足かせになっている。旅行会社はツアーなどを見合わせざるを得ない状況だ。地域別ではアジア諸国で旅行制限が依然として強く、台湾(91%)、中国(84%)、日本(82%)の3カ国は同回答の割合が80%を超えた。
「需要の減少」を悪影響として挙げる企業は59%で、4月の前回調査から2ポイント上昇した。景気の急速な悪化を受けて製品とサービスの販売が減少。製造業では機械と自動車の引き合いが大きく落ち込んでいる。
こうした状況を受けて投資を先送りないし取りやめる現地のドイツ系企業は4月の35%から56%へと大幅に増えた。同比率は特にラテンアメリカで高く、メキシコは76%、ブラジルは74%に達した。投資を増やすとの回答は10%にとどまった。このなかには感染防止対策を行うホテルなども含まれており、投資が必ずしも事業の拡大につながるわけではない。
現地の雇用を削減するとの回答も4月の35%から43%へと拡大した。生産能力調整や事業拠点の閉鎖に踏み切る動きが背景にある。ラテンアメリカでは同回答が50%を超えた。
現地経済の回復時期については93%が2021年以降と回答した。特に北米と南米の現地法人が悲観的で、同回答の割合はそれぞれ97%、96%に達した。一方、アジアの現地法人は相対的に見通しが明るく、中国は84%と最も少なかった。ユーロ圏は91%だった。
現地経済が危機を克服するうえでの足かせ要因としては「公的債務の増加」を挙げる企業が最も多く、52%に上った。同回答は特に南アフリカ(89%)、スペイン(81%)、ホンジュラス(81%)、ケニア(79%)で高い。日本は62%だった。
危機克服の足かせ要因としてはこのほか「企業支援の欠如」「旅行制限」「政治的な枠組み条件」との回答がともに47%と多かった。