ドイツ連邦統計局が7月30日発表した2020年4-6月期(第2四半期)の国内総生産(GDP)は物価・季節要因・営業日数調整後の実質で前期比10.1%減となり、4半期ベースのGDP統計を開始した1970年以降で最大の減少幅を記録した。リーマンショックに端を発する金融・経済危機のピークに当たる09年1-3月期(第1四半期)でもマイナス成長幅は4.7%にとどまっており、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴う現在の危機は深刻だ。Dekaバンクのエコノミストは「今それが公式になった。百年に一度の景気後退が」と明言した。
製品とサービスの輸出、輸入がともに激減したほか、個人消費と設備投資が大きく落ち込んだ。国が巨額の経済支援策を打ち出したことから、政府最終消費支出はマイナス成長をやや緩和したとみられる。
GDPは前年同期比でも実質11.7%減(物価・営業日数調整値)と、大きく落ち込んだ。マイナス成長幅はこれまでの最高である7.9%(09年第2四半期)を大きく上回っている。
ドイツ経済は第2四半期に底を打ち、今後は回復に転じるという点で、エコノミストの予想は一致している。ただ、不確定要素が多く回復のシナリオは明確に描きにくい。
景気を最も強く左右する要因は新型コロナの感染が今後、どうなるかだ。感染の「第二波」が到来するなど拡大の方向に向かえば、各種の規制が強化され経済が再び悪化するのは避けられない。流行の世界的な長期化はグローバル依存度の高いドイツ経済の大きな足かせとなる。世界経済の低迷が長期化すれば、輸出だけでなく設備投資の回復も期待できない。
国内に目を向けると、国の支援策がポイントとなりそうだ。ドイツ政府は新型コロナ危機の発生を受けて補助金交付や操短手当などの形で企業と就労者を底支えしている。その規模は莫大であり、同国は今年、巨額の財政赤字を確実に計上する。
危機が長期化した場合、そうした支援を継続するかしないかでは、危機後の景気回復のあり方が大きく異なってくる。財政負担の限界を理由に支援を停止ないし大幅縮小し、経営破綻が相次ぐようだと、雇用の受け皿が小さくなることから、回復の足取りは鈍くなる。政府としては可能な限り回避したいシナリオだ。
統計局は今回、新たなデータをもとに2015年以降のGDP統計の見直しを実施した。この結果、多くの数値が改定されており、15年の成長率は1.5%から1.2%、17年は同2.8%から2.9%、18年は1.5%から1.3%へと改められた。
四半期ベースでも19年第4四半期がマイナス0.1%から0.0%、20年第1四半期がマイナス2.2%からマイナス2.0%へと引き上げられるなど修正が多数、加えられている。
従来の統計では、GDPが今年第1四半期に2四半期連続のマイナス成長(景気後退入りの指標)となったとされていた。今回の発表で19年第4四半期の成長率が0.0%に修正されるとともに、今年第2四半期がマイナス成長となったことから、ドイツ経済が景気後退入りした時期は第1四半期から第2四半期にずれ込んだことになる。
ユーロ圏は12%縮小
一方、欧州統計局ユーロスタットが31日発表したユーロ圏の第2四半期のGDP(速報値)は前期比で実質12.1%縮小した。EU全体でも11.9%減と振るわない。
データがそろっている10カ国のなかでマイナス成長幅が最も大きかったのはスペインで、18.5%に達した。新型コロナの感染者数が多く、厳しいロックダウン(都市封鎖)が実施されたことが響いた格好。このほか、ポルトガル(-14.1%)、フランス(-13.8%)、イタリア(-12.4%)、ベルギー(-12.2%)で縮小幅がEU平均を上回った。縮小幅は最も小さいリトアニアでも5.1%に上っている。