欧州連合(EU)の欧州議会は7日の本会議で、2050年までにEU域内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標に法的拘束力を持たせる「欧州気候法」の修正案を賛成多数で可決した。修正案には30年に域内の温室効果ガス排出量を1990年比で60%削減するとの目標が盛り込まれている。欧州議会は今後、通常立法手続きに基づき閣僚理事会との協議に入るが、30年の削減目標は欧州委員会が9月に打ち出した「少なくとも55%」よりさらに野心的な内容で、化石燃料への依存度が高い東欧諸国などからの反発が予想される。
欧州気候法はEUの包括的な環境政策「欧州グリーンディール」の柱となるもので、欧州委が今年3月に法案を発表した。9月に欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会が採択した修正案の中で、30年の削減目標については当初、最大会派の欧州人民党(EPP)グループが反対の意向を表明していたが、本会議では同グループに属する多くの議員が棄権したため、賛成392、反対161(棄権142)で可決された。
EUは30年を達成期限とする拘束力のある温室効果ガス削減目標を40%に設定していたが、欧州委のフォンデアライエン委員長は9月の一般教書演説で、50年のカーボンニュートラル(気候中立)の実現に向けて30年までに域内の温室効果ガスを少なくとも55%減らすと表明した。現時点で加盟国の約半数が欧州委の提案を支持する一方、化石燃料に依存するポーランドやチェコなどは急激なエネルギー転換による自国産業への影響を懸念し、削減目標の引き上げに難色を示している。
修正案にはこのほか◇50年までにEU全体だけでなく、全ての加盟国が気候中立を達成する◇化石燃料産業に対する補助金を25年末までに廃止する◇EUおよび加盟国の政策を科学的に評価し、進捗を監視する専門組織として「EU気候変動評議会(ECCC)」を設置する◇50年の気候中立に向けて40年までの中間目標を設定する――などが盛り込まれている。