ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は14日、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた措置の強化を取り決めた。気温の低下に伴い感染者数の増加が加速しているためで、メルケル首相は会議後、コロナ対策で国(連邦)が今年だけで2,500億ユーロ超の巨額新規債務を計上することを指摘。感染の第2波が仮に到来すると財政的に対処できなくなると述べ、感染防止に努めることを市民に強く促した。州によってルールが異なる宿泊規制については共通理解を図ることができなかった。
国と州の首相は9月末の会議で、感染者数が一定水準を超えた地域(郡ないし特別市)を対象に、結婚式や誕生日会など私的イベントの参加者数を制限することで合意。人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数が35人を超えた地域では、参加者数の許容上限を公共の場で50人、自宅など私的な場で同25人にすることを取り決めた。また、新規感染者が50人を超えた地域ではそれぞれ25人、10人に設定した。
今回の会議では許容上限を一段と削減。新規感染者が35人を超えた地域では私的イベントの参加者数を25人(公共の場)/15人(私的な場)へと引き下げることにした。公共の場でのマスク着用義務も強化する。
50人を超えた地域については、私的イベントの参加者数を最大10人に制限。会場が自宅などの私的な場である場合は3家族以上の参加を禁止する。また◇マスク着用義務のさらなる強化◇公的な場に集まる人の数を最大10人に制限◇23時以降の飲食店の営業を禁止――などの措置を取る。
50人超の地域で感染防止強化策が10日経っても効果を出さない場合は規制がさらに強化される。公的な場に集まれる人数は2家族以内の5人が上限となる。
国内州の過半数は7日、感染者数が50人を超えた危険地域からの旅行者をホテルなどの宿泊施設に泊めることを原則的に禁止することで合意した。本来は16州すべての合意を目指していたが、厳しい規制を嫌う州や、より厳しい規制を実施している州もあり、実現できなかった。この結果、危険地域の住民はどの州で宿泊ができ、どの州でできないかが分かりにくくなった。また、宿泊禁止の対象に出張者を含めるかどうかなどルールの詳細が州によって異なっていることから、混乱を招いた。
今回の会議ではこの問題で共通理解を図ろうとしたが、溝は埋まらなかった。このため共同声明には、危険地域への旅行と危険地域からの旅行を可能な限り見合わせることを市民に要請するという文面が盛り込まれるにとどまっている。
国内地域の31%がホットスポットに
ドイツでは新型コロナの新規感染者数が急速に増え続けており、8日には前日の2,828人から4,058人へと43%増加した。拡大傾向はその後も止まらず、14日には5,132人と5,000人を突破。15日には6,638人に達し、3月末に記録した過去最高を更新した。イエン・シュパーン保健相は、クリスマスを例年通りに過ごせるかどうかは市民がマスク着用義務と社会的距離ルールを守るかどうかにかかっていると述べ、ルール順守の徹底を呼びかけた。
新規感染者数はその後も増え続け、16日に7,334人、17日には7,830となり、3日連続で過去最高を更新した。人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数が計50人を超える「危険地域(ホットスポット)」は20日時点で126地域に達しており、国内の計404地域のうち31%がホットスポットとなっている。イエン・シュパーン保健相は感染経路の追跡・遮断が困難になりつつあることを指摘。これまでは状況を制御できていたが、現在は制御できなくなる方向に向かっていると述べ、危機感を表明した。
集中治療ベッドで治療を受けている人は851人(19日時点)で、そのうち389人は人工呼吸器による酸素投与を受けている。15日はそれぞれ655人、329人、8日は487人、239人、1日は362人、193人にとどまっており、重篤患者数の拡大が止まらない状況だ。