フォード―PHVに発火の恐れ、原因不明でリコールは見合わせ―

米自動車大手フォードの欧州法人が手がけるクロスオーバーSUV「クーガ」のハイブリッド車(PHV)モデルに発火の恐れがあることが分かった。同社はドイツ連邦陸運局(KBA)と協議し、すでに販売を停止した。今後はリコール(無料の回収・修理)を行う意向だが、原因が解明されていないため、当面は実施できない見通しだ。同社への取材をもとに経済紙『ハンデルスブラット』が報じた。

搭載するリチウムイオン電池セルが過熱し発火する恐れがある。これまでに数件の発火が確認されている。ドイツ販売の統括責任者は、原因を解明して修理方法を確定するには数カ月を要するとの見方を示した。

クーガのPHVモデルはこれまでに欧州で計3万3,000台が販売された。同社は顧客に対し、充電と電動走行の見合わせを要請している。電動走行できないことへの埋め合わせとして給油券500ユーロと修理券350ユーロを提供する考えだ。

電池セルについてはハンガリー製であることを明らかにしたものの、製造元の名は伏せている。同国ではサムスンSDIなどがセル工場を運営している。

欧州連合(EU)では二酸化炭素(CO2)の排出基準を順守できないメーカーに制裁金を課すルールが今年から導入されている。メーカーはEU市場での年販売台数に応じ、排出許容上限(走行1キロメートル当たり95グラム)を1グラム超過するごとに1台当たり95ユーロの制裁金を課されることになっている。PHVはCO2排出量が内燃機関車に比べて少ないことから、PHVモデルを拡充して同規制に対応するメーカーは多い。

フォードもPHVの販売増を通して規制をクリアする方針だ。だが、クーガのPHVモデルは当面、電動走行できないことから、内燃機関車扱いとなり、同社製車両全体のCO2排出削減に寄与できなくなる可能性が浮上している。同モデルを引き続きPHV扱いとするかどうかは最終的に監督官庁が決めることになるため、フォードは現在、KBAと協議を進めている。

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