総合医療大手の独フレゼニウスはロシア事業を継続する意向だ。シュテファン・シュトゥルム社長が『フランクフルター・アルゲマイネ』紙への寄稿文で明らかにした。
同社は現在、ロシアで人工透析センターおよそ100カ所を運営。病院向けに医薬品と栄養剤も供給している。
シュトゥルム氏は「ロシアの指導部が開始した侵略戦争を断固として弾劾する」と述べ、「ウラジミール・プーチン大統領と、野蛮な戦争を許す体制に怒りを感じる」と明言した。それにもかかわらず同国から撤退しないのは、フレゼニウスが腎臓病患者への人工透析サービスや医薬品供給を停止すると、多くの患者が死亡するためだと指摘。同社が仮にファーストフードチェーンや消費財メーカーであればすでにロシアから撤退していると言い切った。フレゼニウスが撤退した場合、その穴を埋める製品やサービスは少なくとも短期的には存在しないという。
同氏はまた、ロシア事業で現在、利益を上げておらず、黒字化の見通しも立っていないことを明らかにした。同国事業を継続するのは経済的な理由からではないと強調している。ロシアへの医薬品輸出を西側諸国が原則的に禁止しないのは人道的な配慮からだと述べた。
ウクライナでは戦争勃発前、人工透析センターを計3カ所、運営していた。そのうち2カ所はロシア軍の激しい攻撃を受けるハルキウとチェルニーヒウにあった。フレゼニウスは両拠点を3月末まで運営。その後は患者とその家族を比較的安全な地域に避難させた。シュトゥルム氏は絶え間ない爆撃下で尽力した現地社員の「英雄的な功績を誇りに思う」と謝意を示した。