血液製剤製造の独ビオテストは25日、スペインの製薬大手グリフォルスによる同社の買収手続きが完了したと発表した。グリフォルスは買収によりノウハウや製品ポートフォリオを拡充。ビオテストは米国市場への再進出を果たす。
グリフォルスは昨年10月、ビオテストへの株式公開買い付け(TOB)計画を明らかにした。この時点ですでに、ビオテストの親会社だった中国企業、科瑞集団が保有するビオテスト株をすべて取得することを取り決めており、TOBでは他の株主から保有株を取得。買収手続きが完了したことで、ビオテストの普通株96.2%と優先株43.2%を獲得した。
科瑞は2018年、ビオテストを子会社化した。科瑞は16年にも血液製剤の英バイオ・プロダクツ・ラボラトリー (BPL)を買収しており、同分野でグローバルに事業を展開していく計画だった。
だが、米当局は科瑞のビオテスト、BPL買収計画にそれぞれ疑義を示した。血液製剤の原料である血漿の米国における提供者と患者の個人データに科瑞がアクセスできるようになることを問題視したためだ。科瑞はこれを受け、両社の米国事業を買収対象から除外したことから、ビオテストは結果的に米国事業からの撤退を余儀なくされた。
ビオテストのミヒャエル・ラムロート社長は25日の声明で、「(今回の)所有者の変更で得た米国市場再進出の可能性はビオテストの今後の成長にとって決定的に重要な意味を持つ」と強調した。米国は世界の血漿供給の約60%を占めるうえ、血液製剤市場規模も断トツで大きい。また、欧州などと異なり薬価規制がないことから、製品の販売価格を高く設定できるというメリットがある。