対ロ制裁第6弾、石油禁輸の棚上げ検討か

欧州連合(EU)の欧州委員会がウクライナへの侵攻を続けるロシアに対する追加制裁の柱として提案した石油の輸入禁止をめぐり、加盟国による合意形成が難航している。ロシア産原油に大きく依存するハンガリーなどが難色を示しているためで、欧州委はこれらの国に禁輸実施までの猶予期間を与える案を提示したものの、合意には至っていない。制裁発動には加盟国の全会一致が必要で、ロイター通信は近く合意が得られるとのEU外交筋の楽観的な見方を引用する一方、政治専門サイト「ポリティコ」は制裁案から石油禁輸をいったん除外する案が浮上していると報じるなど、協議の行方は不透明だ。

欧州委は今月4日、ロシア産石油の輸入を年末までに段階的に禁止することなどを盛り込んだ第6弾の制裁案を発表した。原油は6カ月以内、石油精製品は年内に輸入を停止するとともに、EU関連の船舶による第三国への輸送や、海上保険のサービス提供も禁止する内容だ。

禁輸に反対する加盟国を説得するため、欧州委は石油禁輸の期限についてハンガリーとスロバキアには2024年12月末、チェコには同年6月までの猶予期間を与える案を提示したが、ハンガリーは2年の猶予期間延長にも難色を示し、禁輸の実施義務自体を免除するよう求めているとみられる。

制裁案をめぐっては、石油禁輸をいったん棚上げする案のほか、EU域内に籍を置く船舶による第三国への輸送禁止を除外する案などが取り沙汰されている。これは積載重量で世界の石油タンカーの4分の1余りを保有するギリシャが提案したもよう。EU船籍による輸送禁止が実現すれば、ロシアの石油輸出に大きな打撃を与えることができるだけに、今後の協議では禁輸実施までの猶予期間と並んで重要な鍵を握りそうだ。

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