欧州連合(EU)加盟国と欧州議会は19日、加盟国に一定量のガス備蓄を義務付ける規則案の内容で基本合意した。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に伴いエネルギー価格の高騰が深刻化するなか、EUはロシア依存からの脱却を図りながら、エネルギーの安定供給を確保するための施策を検討しており、ガス備蓄の義務化もその一環。閣僚理事会と欧州議会の正式な承認を経て新規則が導入される。
規則案はエネルギー需要が高まる冬場に向けた対応策として、3月に欧州委員会が提案していた。今回の合意によると、加盟国は自国のガス貯蔵施設について、2022年11月までに80%の貯蔵率を達成しなければならず、1年後には満たすべき貯蔵率が90%以上に引き上げられる。EU全体では今冬に85%の貯蔵率を目指す。
ただし、大きな貯蔵能力を持つ特定の加盟国に過度な負担がかかる事態を防ぐため、備蓄義務は各国における過去5年間の年間ガス消費量の35%を上限とする。一方、備蓄義務に伴う負担を加盟国間で分担するため、自国に貯蔵施設を持たない加盟国に対しては、自国における過去5年間の年間ガス消費量の15%相当を他の加盟国の貯蔵施設から確保することを求める。キプロス、マルタ、アイルランドの3カ国については、他の加盟国のガス供給網と直接接続されていないため、一連の義務を免除する。
さらにエネルギー安全保障の観点から、ガス貯蔵施設運営者に対する認定制度を導入する。貯蔵施設の運営者は施設が所在する加盟国の当局から、自身が域外国の企業であるなどの理由によって安定供給が脅かされるリスクはないとの認定を受けなければならず、認定されなかった場合は貯蔵施設の売却を求められる。
備蓄義務は25年12月31日までの時限措置とするが、ガス貯蔵施設の運営者に対する認定制度はその後も維持される。