ロシア国営天然ガス会社ガスプロムが欧州エネルギー大手オーステッドとシェルエナジー・ヨーロッパ向けの供給を1日付で停止した。ロシア政府が要求するルーブル建てでの支払いを同2社が拒否したため。これに伴いシェルエナジーがガスプロムからドイツ向けに調達予定だったガスの輸送が停止された。ドイツ向けの供給が止まるのは初めて。独エネルギー大手RWEとユニパーはガスプロムからの供給を引き続き受けている。
ロシアでは4月、同国に制裁を課した米国、欧州連合(EU)、日本など「非友好国」の企業に天然ガスのルーブル決済を義務付ける大統領令が施行された。非友好国の企業はガスプロムの金融子会社ガスプロムバンクに外貨建てとルーブル建ての口座を開設し、支払いを行うことになっている。外貨建て口座に振り込まれた代金は両替されたうえで、ルーブル建て口座へと改めて振り込まれる仕組みだ。非友好国の顧客は従来通り外貨で支払うことができる。
だがEUの欧州委員会は、この枠組みを利用して行われる決済は対露制裁違反だとの判断を示した。外貨建ての振り込みが行われた時点で決済が完了するのであれば制裁違反とならないものの、ロシア政府はルーブル建て口座への入金を以て決済が完了するとの立場を取っているためだ。
ロシアの要求に応じなかったポーランド、ブルガリア、フィンランド、オランダに対しては5月末までにガス供給が停止されていた。
RWEとユニパーは支払いを行ったことから6月に入っても供給を受けている。両社はともにユーロ建てで支払いを実施。EUの制裁を遵守しながらロシアの要求も満たしたとしている。支払いに際しては制裁に抵触しないよう、ドイツ政府とすり合わせを行った。RWEはロシアに口座を開設しユーロ建てで支払いを行ったとしている。ユニパーは詳細を明らかにしていない。
シェルエナジーがドイツ向けにガスプロムから調達するガスの規模は最大で年12億立方メートルと契約で取り決められていた。これは同国の天然ガス消費量(950億立方メートル)の約1%にとどまることから、国内供給への影響は小さいとみられる。