石油大手の分割を可能に、カルテル法改正方針を経済相が表明

ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相は12日、石油大手に対する独禁規制の強化方針を表明した。市場が寡占状態にあり、競争原理を通した製品価格の低下が起こりにくい現状を改める狙い。物価高騰を受けて実施した自動車燃料税軽減の効果がガソリンスタンド価格に十分に反映されていないとみられることから、経済・気候省で準備しているカルテル法の改正を今年に前倒しする意向だ。必要があれば石油大手を分割できるようにする。

インフレ率の高騰を受け、消費者の実質可処分所得は減少している。政府はその対策として負担軽減策を実施し、自動車燃料税額を6月1日から3カ月限定で大幅に引き下げた。減税幅はガソリンで1リットル当たり30セント、軽油で同14セントとなっている。

スタンドでの販売価格は1日にある程度、低下したものの、下げ幅は減税幅に比べて小さかった。その後は価格が上昇していることから、批判が噴出。イタリアや英国のように超過利潤税を導入するよう求める声も強い。ただ、与党内に反対意見があり導入が難しいことから、ハーベック氏はカルテル法改正の前倒し方針を打ち出した。石油大手への圧力を強める狙いだ。燃料価格を速やかに低下させる効果はないものの、適正な競争原理が働かない現状の是正につながるとみている。

最大の目玉は、市場での強い地位を乱用している疑いが証明されない場合でも顧客への悪影響が明らかであれば、連邦カルテル庁が石油会社を分割できるようにするというものだ。寡占市場では違法なカルテルが結ばれていなくても価格が下がりにくく、消費者が不利益を受けやすいという事情が考慮されている。

市場での地位を乱用して不当な利益を上げていることが確認された場合は、当該石油会社から連邦カルテル庁が課徴金を取り立てやすくするルールも導入する。不当な利益に課徴金を課すことは現行法でも可能だが、立証のハードルが高いため、これまで実行されたことはない。ハーベック氏は立証のハードルを引き下げ、課徴金を徴収しやすくする考えだ。

ガソリン価格の低下幅が減税額を下回っている原因は現時点で不明。カルテル庁は市場動向を監視しているものの、原因解明には時間がかかる。石油会社が不当な利益を得ている可能性はあるものの、世界市場の価格動向や製油所のキャパシティ不足など値上げの正当な理由がある可能性も排除できない。

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