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2022/7/20

総合 - ドイツ経済ニュース

エネルギー高騰で企業が従業員支援

この記事の要約

エネルギー価格高騰などの直撃を受ける従業員への支援をドイツ企業の過半数が行っていることが、Ifo経済研究所が4-6月期に実施したアンケート調査で分かった。政府は市民への支援策を実施しているものの、高インフレによる実質所得 […]

エネルギー価格高騰などの直撃を受ける従業員への支援をドイツ企業の過半数が行っていることが、Ifo経済研究所が4-6月期に実施したアンケート調査で分かった。政府は市民への支援策を実施しているものの、高インフレによる実質所得の目減りを相殺するには足りないことから、多くの企業が独自のサポートを開始している。

ロシアのウクライナ進攻を受けインフレ率の上昇が加速したことから、政府は市民負担の軽減策を開始した。6月から3カ月限定で自動車燃料税を引き下げたほか、長距離路線を除く全国の公共交通機関を月9ユーロで利用できる「9ユーロチケット」を導入。就労者には300ユーロのエネルギー手当てを支給する。子持ち世帯と低所得層は一時金も受給する。

だが、エネルギー価格が高騰し、暖房費だけでも年に数千ユーロ規模の支出増が見込まれることから、中所得層以下の世帯は家計が強く圧迫される見通しだ。

こうした事情を踏まえ、従業員への支援に乗り出す企業が増えている。Ifoによると、全体の57%が何らかの支援を行っている。最も多いのは給油券の支給で32%に上った。中小企業で目立つという。2位は一時金の支給で22%、3位は通勤手当の支給で21%。定期券など公共交通機関の利用費支給も19%に上った。公共交通機関の費用を引き受けるのは経営規模の大きい企業で多く、従業員数500人超の企業では36%だった。

ホームオフィスの利用を拡大した企業は21%に上った。パソコンがあればどこでも仕事を行える社員が多いサービス業では3社に1社が該当する。ホームオフィスの利用拡大日数は月平均8.5日に上る。

在宅勤務を増やすことで被用者は通勤費を節約できる。企業にとっても冷暖房コストの削減につながることから、利用拡大を検討する企業は多い。化学大手ヘンケルのカルステン・クノーベル社長は先ごろ、そうした考えを表明し注目を集めた。ただ、在宅勤務を冬季に行えば自宅の暖房費が膨らむことから、企業は暖房手当を支給すべきだとの声が労働組合や政治家の間から出ている。Ifoのアンケートでは暖房費を支給する企業は1%にとどまった。

物価高騰や労使合意、法定最低賃金の引上げなどを受けて上半期に賃金を引き上げた企業は37%だった。下半期に賃上げを行うとの回答は47%に上ったことから、今年は計84%で賃金が上昇する。

雇用は安定の見通し

企業コンサルティング大手ウィリス・タワーズワトソン(WTW)がドイツで実施したアンケート調査では企業の4割が賃上げ幅を当初計画より拡大すると回答した。ただ、高インフレに合わせて賃金を引き上げると賃金物価スパイラルの悪循環に陥るリスクが高いことから、多くの企業は時限賃上げや一時金支給で対応する意向だ。Ifoの調査では、一時金を上期に支給したとの回答が14%だった。下期に支給する(38%)と合わせると、52%が今年、一時金を支給する。

インフレ率の相殺を目的とする手当を上期に支給した企業は6%だった。下期に支給する企業も12%にとどまることから、合計は18%と比較的少ない。

物価高騰や天然ガス供給不足を受け、ドイツは景気後退局面に陥る懸念が強まっているが、雇用については安定的に推移する見通しだ。Ifoの調査では雇用規模を保つとの回答が66%、新規雇用計画を変更しないが同58%に達した。

サービス業では雇用規模を「拡大する」が10%となり、「縮小する」の3%を大きく上回った。コロナ禍で人員整理を行ったが、規制緩和で業務が正常化し人手不足に直面する企業が多いことが背景にある。新規雇用についても「拡大」が10%に上ったのに対し、「縮小」は3%にとどまった。

製造業でも雇用規模の「拡大」が12%となり、「縮小」(7%)を上回った。ただ、新規雇用については「縮小」(13%)が「拡大」(9%)を上回っている。

流通業では雇用規模の「拡大」が5%にとどまり、「縮小」(10%)を下回った。高インフレで消費者が出費を控えていることが響いているもようだ。新規雇用も「縮小」(10%)が「拡大」(8%)を上回っている。