欧州連合(EU)の欧州委員会は15日、ドイツなど加盟15カ国が水素分野の開発プロジェクト合わせて41件に補助金を交付することを承認した。各国は「欧州の共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の枠組みで助成を行う。水素プロジェクトが同枠組みで公的支援を受けるのは初めて。欧州の脱炭素化と、ロシア産化石燃料依存からの脱却につながると期待されている。
計35社が行う41件のプロジェクトに公的支援を行うことが承認された。支援総額は最大54億ユーロ。ドイツでは◇ボッシュが進めている、定置利用を想定した固体酸化物形燃料電池の研究プロジェクト「ボッシュパワーユニッツ」◇アルカリ水電解装置と固体酸化物形電解セル(SOEC)水電解装置の量産に向けてサンファイヤーが取り組むプロジェクト「サンファイヤー1500」◇ダイムラーが進める燃料電池セルベースのトラック用ドライブトレインプロジェクト「ペガサス」◇独仏資本のEKPOフューエルセル・テクノロジーが進める次世代燃料電池セルスタックモジュールの開発・商業化プロジェクト「ネクストジェンHDスタック」――の4件が認められた。
EUでは企業間の公正な競争環境を保つため、補助金が厳しく規制されている。ただ、EUの政策目標に合致するものの、公的支援なしでは実現が難しい分野のプロジェクトに関してはIPCEIの枠組みで例外的に規制が緩和されている。IPCEIはすでに電池、マイクロエレクトロニクス、インフラの3分野で適用された。水素は4分野目となる。欧州委は今回承認したプロジェクトで88億ユーロの民間投資を促進できるとみている。