ロシア産天然ガスをバルト海経由でドイツに輸送するガス管「ノルドストリーム1(NS1)」はメンテナンス作業を終了し、21日に再稼働した。ただ、供給量は容量の40%とメンテナンス前と同じ低い水準にとどめられている。25日にはさらに、27日から同20%に引き下げることを露国営ガス会社ガスプロムが予告しており、ロシア政府はガス不足の危機に直面するドイツや欧州連合(EU)を揺さぶる考えとみられる。
NS1のメンテナンスは11日に開始。期間は10日と予告されていた。メンテナンスは定期的に行う必要があるものの、ガスプロムはNS1の輸送量を6月中旬から容量の40%に引き下げていたことから、ドイツなど西側諸国ではメンテナンス終了後も供給を再開しないとの懸念が広がっていた。
ロシアのプーチン大統領は輸送再開に先立ち、「ガスプロムは義務を守るし、常に守ってきた。今後もすべての義務を守る意向だ」と述べ、輸送再開を示唆していた。ただ、修理のためにカナダに輸送されていたタービンが返却されなければ、今月末から輸送量を容量の20%に減らす可能性があると言明。タービンの速やかな返却を強く促した。
同タービンはNS1のガス輸送に用いるもので、英ロールスロイスが2010年に供給した(ロールスロイスの当該事業は現在、独シーメンス・エナジーの一部となっている)。修理中にカナダが下した対露制裁を受けて、返却できなくなっていた。
ガスプロムはこれを受け、同タービンが返却されないため輸送量を減らさざるを得なくなったとして、NS1の供給削減に踏み切った経緯がある。
カナダはドイツ政府の要請を受け、同タービンをロシアに返還することを決めた。制裁に抵触しないようドイツ経由で輸送するもようだ。露『コメルサント』紙によると、17日にドイツへと空輸されたが、ロシアへの引き渡しは書類不足で遅れているという。
ガスプロムは25日、手持ちのタービンのメンテナンスを行うため、NS1の輸送量を1日当たり3,300万立法メートルに削減することを通告した。容量の20%に相当する。欧州のガス不足が危機的な状況にあることを知りながら突然、メンテナンスを通告する背景に政治的な意図があるのは確実とみられる。